起立性調節障害(OD)へのアプローチ


当院ではフィシオエナジェティック®によって症状の原因を調べています。フィシオエナジェティック®では、腕の長さの変化となって現れる体の反応を読み取りながら治療を進めていきます。これをARテスト(腕長反射)と言います。

※当院では医師のような病気の診断や医療行為はできません。フィシオエナジェティック®はあくまで代替療法であり、現代医学で認められていない事をご了承下さい。



親が「受け止める」という事

恐らく、大抵の親は、我が子は怠けているのではなく起立性調節障害という病気で学校に行けないという事はよーくわかっているはずです。しかし、頭ではわかっていても、朝起きられないのにスマホやゲームは何時間もするし、本人に良くなろうと努力する姿勢が見られないと、つい苛立ちをぶつけてしまう親がとても多いようです。

このように、頭では、苛立ちをぶつけてはいけないと十分にわかっているのに、ついつい苛立ちをぶつけてしまう親には、認知からアプローチする従来の心理療法は効果的ではなく、私が行っている身体感覚からアプローチする心理療法がとても必要です。具体的には、苛立っている時の身体感覚、例えば、身体が熱くなる、呼吸が荒くなる、頭に血が昇るなどの落ち着かない身体感覚に気づき、その身体感覚を落ち着いて俯瞰するようなセラピーです。

それから、あなたは子供の気持ちを理解しようと努力しているでしょうか? そしてお子さんは、「自分の気持ちを分かってくれている」と実感できているでしょうか? もしかして、あなたは子供の気持ちを理解しようとしていない、あるいは理解できていないくせに、親の気持ちは必死になって子供に理解させようとしていませんか?

つい苛立ちをぶつけてしまうような親だと、子供は萎縮して自分の気持ちを親に開示しなくなったり、自分を責めたり、親に怒りをぶつけてきたりします。このような不健全な親子関係は間違いなく起立性調節障害の回復を妨げます。

親は子供の気持ちをしっかり受け止めてあげて下さい。「受け止める」というのは「受け入れる」というのと意味が違います。「受け止める」というのは、子供が自分の気持ちを伝えた時に、例え異論反論があったしも否定する事なく、まずは「そうなんだね」とか「辛いんだね」と言った感じで、子供の気持ちにしっかり寄り添ってあげる事です。

しかし、子供の反発を恐れたり、子供に好かれようとして、断るべき子供の要求に従ってしまったり、間違っている子供の言い分も認めるような事はする必要がありません。それは「受け止める」ではなく悪い意味での「受け入れる」であって、「甘やかし」とも言えるでしょう。そんな場合は、「受け入れる」という事はせずに、まずは「受け止める」という事をしてから、「受け入れる」という事ができない理由を穏やかに説明すれば良いのです。

「受け止める」というのは実際には結構難しい事なんですが、あなたがお子さんの起立性調節障害の回復を願っているのなら、子供の気持ちを「受け止める」という事ができるように努力してください。受け止めよう意識しているのにどうしても受け止める事ができない場合は、先程もの説明したような身体感覚にアプローチする心理療法が必要です。

子供に対する心理療法

起立性調節障害というのはサボりや怠けではなく、学校に行こうと思っても身体の不調によって行けないという状態です。そして、起立性調節障害のお子さんには「学校に行けるようになりたい」という気持ちは間違いなくあります。もし「学校に行けるようになりたい」という気持ちがなかったらただの不登校です。

しかし、学校でのコミュニケーションや成績の事、それから親の期待など、学校に行く事や勉強する事が大きなストレスになっていて「学校に行くのが辛い」という気持ちもある子も多いです。そして、「学校に行けるようになりたい」けど「学校に行くのが辛い」という、相反する気持ちが混在している事があります。「学校に行けるようになりたい」という気持ちに対してメンタルブロックがかかっている状態なので、「学校に行くのが辛い」という気持ちを癒やしていかないと、なかなか良くなりません。そのためには、まず「学校に行くのが辛い」という子供の気持ちを親やセラピストがしっかり「受け止める」という事が重要です。

それから、HSPってみなさんご存知でしょうか? 最近流行の言葉なのでご存知の方の多いかもしれませんが、一応、私からもサラッと説明しておきます。HSPとはHighly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の事で、とっても繊細な人という意味です。HSPの人はこの繊細さゆえに、普通の人にはストレスにならないような事でもストレスになります。HSPとは心理学者のエレイン・アーロン博士が提唱している概念ですが精神医学の診断名ではありません。エレイン・アーロン博士によるとHSPは生まれ持った気質であり、後天的なものではないので治療する対象ではなく、HSPの特性とうまく付き合っていくべきものされています。

起立性調節障害のお子さんは、このHSPの特徴に結構当てはまっているので、うちの子はHSPかもしれない思っている親御さんもいるかもしれませんが、私は似ているだけで違うと思っています。なぜなら、身体感覚にアプローチする心理療法で、非常にゆっくりとですが、HSPのような気質が変化していくからです。そもそも、HSPは生まれつきなので治療の対象ではないとかHSPの特性を長所に変えるとか、そういう事がHSP専門カウンセラーみたいな人たちによって広められていますが、精神医学の世界では否定されています。精神医学の世界ではHSPのような気質も治療の対象ですし、遺伝と後天的要素のミックスであると考えられています。ですから、HSPの事は気にしないほうが良いかと思います。

それから、もう1つ「ニューロセプション」について説明しておきましょう。近年のトラウマセラピーでは重要な理論となっているポリヴェーガル理論では、私達が無意識領域で常に安全か危険かを感じ取っているセンサーのようなものを「ニューロセプション」という言葉で表現しています。精神的健康度が低い人のニューロセプションは、安全な状況においても「安全ではない」と感じ取っています。簡単にいうと、ストレスと感じる閾値が非常に低いという事です。ですから、普通の人にとってストレスとは思えないような事でもストレスになり、それが起立性調節障害のような自律神経症状を誘発します。

ですので、まずニューロセプションが安全や安心をしっかり感じ取れるようにするセラピーがとても重要なのです。そのためは、私が行っているような身体感覚にアプローチする心理療法によって、意識ではなく身体感覚で安心・安全をしっかり感じてもらうという事を繰り返し行う必要があります。

体液量を増やすアプローチ

起立性調節障害と関連がある起立直後性低血圧や起立性頻脈症候群などは体液量が減少している事が原因です。そのため、1日1.5から2リットルの水分を摂取をしましょうとか、塩分を多めにとりましょうなどの指導が定番になっています。そもそも、水分とナトリウムなどの電解質の補給は栄養療法の基本中の基本であり、水分と電解質が足りていない状態で、あれこれ色々なサプリメントを飲んでもあまり効果がありません。

私の観察では、起立性調節障害の子は少食あるいは食事の回数が少なく、運動もしていないため筋肉がなく痩せている子が多いのですが、それも体液量が少なくなる原因となっています。なぜなら、まず食事量が少ないと、食事から摂取する水分と塩分が少なくなるというのがまず1つ。それから、筋肉は身体の中で最も多くの水分を含んでいる場所であり、貯水タンクのような役割をしているので、筋肉量が少ない人ほど体液量が減少しやすいからです。

WHOによるBMI判定基準

  • 16未満 →痩せすぎ
  • 17未満 →痩せ
  • 18.5未満 →痩せ気味
  • 18.5以上~25未満 →普通

BMIは以下のサイトなどから簡単に計算できます
https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228732

ですから、BMI指数で最低でも18.5以上の体重になるように食事の量を増やしていく事や、筋肉が増えるような運動を習慣化する事が必要です。ちなみにBMIが22になる体重が適正体重または標準体重とされ、統計的に最も病気になりにくい体重とされています。

しかし、体重を増やそうとか、運動をしようとか、そんな事は起立性調節障害の子にとってかなり難しい事であるのが現実です。食べようと思っても食欲がないとか、昼頃になってやっと起きるので朝食は食べないとか、運動しなくちゃと思っても夜になるまでだるくてやる気が起きないとか、そういう負のループにどっぷりはまっているからです。ですから、まずは、水分と塩分をしっかりとりながら、心理療法受けつづける事で、少しずつ食欲ややる気が出るようにしていくというのが現実的かもしれません。

副腎疲労

起立性調節障害の実態はおそらく副腎疲労でしょう。起立性調節障害の原因としてさきほど説明したストレスや体液量の減少も副腎疲労の大きな原因です。

また、副腎疲労というのは副腎そのものよりも、視床下部、下垂体、副腎皮質の密接なつながりであるHPA軸に問題があります。私達がストレスに曝された時には、このHPA軸が活性化して副腎皮質からコルチゾールの分泌が増大します。その結果、心身は覚醒し、ストレスに対抗できるようになります。そして、ストレスが無くなると、コルチゾールの分泌量は正常値に戻ってゆきます。

しかし、ストレスが慢性化するとHPA軸はしだいにおかしくなります。HPA軸が亢進しっぱなしになっってコルゾールの過剰分泌が続く人もいれば、逆にHPA軸が抑制されっぱなしになってコルチゾールの分泌不足が続く人もいます。

それから、概日リズムの乱れがよくおきます。通常、コルチゾールの分泌量は朝7時くらいにピークに達し、夜にむけて次第に減少するというリズムが正常なのですが、慢性のストレスによって、昼過ぎから夜にかけてピークに達し、朝に減少するというパターンになる事があります。起立性調節障害の子はまさにこのような状態に陥っています。

そして、慢性のストレスによって心身が疲弊した状態に陥ってしまう事をアロスタティック負荷といいます。アロスタティック負荷に一度陥ってしまうと、慢性のストレスから開放された後も、HPA軸はなかなか正常には戻りません。そして、脳がストレスと感じる閾値が下がります。そのため、ストレスとは思えないような事でもストレスになってしまう事があります。これは、さきほど説明したニューロセプションが安全な状況においても「安全ではない」と感じ取っているからです。

それから、副腎疲労のサプリメントとしてよく知られているのは、ビタミンB郡、とくにパントテン酸、それからビタミンC、マグネシウム、亜鉛などでしょうか。そのような栄養素がストレスによって枯渇する人もいるでしょう。あるいは、そのような栄養素が枯渇しているからコルチゾールを産生できないという事も考えられます。しかし、副腎疲労と言われている病態は、副腎が疲労してホルモンの産生ができない状態になっているのではなく、副腎をコントロールする脳のほうに問題がある事がとても多いのです。ですから副腎そのものに働きかけるサプリメントでは副腎疲労に対処できない事が多いでしょう。

また、起立性調節障害は副腎疲労だけでなく甲状腺機能低下の症状はかなり似ていますが、それはコルチゾールの分泌が過剰あるいは不足すると、T3という甲状腺ホルモンが減少するからです。

そのあたりをもう少し詳しく説明しましょう。甲状腺ホルモンには効き目が強いT3と効き目が非常に弱いT4があります。甲状腺は効き目が強いT3をちょっとしか作らないので、肝臓や腎臓などでT4をT3に変換してT3を増加させています。

しかし、過剰なコルチゾールはT4からT3への変換を阻害してしまうんです。またコルチゾールが不足している場合は、T4からT3ではなく、甲状腺ホルモンとしての効き目がほとんどないリバースT3へ変換されてしまいます。つまり、コルチゾールが過剰でも不足していても、T3が合成されなくなるという事です。このようにT4からT3への変換が阻害されてT3が少ない状態をLowT3シンドロームと言います。LowT3シンドロームはスマホのバッテリーが少なくなった時になる省エネモードのような状態です。