顎関節症へのアプローチ


当院ではフィシオエナジェティック®によって症状の原因を調べています。フィシオエナジェティック®では、腕の長さの変化となって現れる体の反応を読み取りながら治療を進めていきます。これをARテスト(腕長反射)と言います。

※当院では医師のような病気の診断や医療行為はできません。フィシオエナジェティック®はあくまで代替療法であり、現代医学で認められていない事をご了承下さい。


顎関節症の人によくみつかる問題

  • グルタミン酸による中枢性の感覚過敏
  • ストレス
  • 顎関節のズレ、咬筋や側頭筋など咬合に関する筋の過緊張
  • 固有感覚や前庭感覚の異常(特に頚部の固有感覚)
  • 舌骨のズレ

ミッドライン(中心軸)の調整

視覚と前庭覚と固有覚はお互いに協力してフラフラしないようにうまくバランスをとっています。

※前庭感覚:内耳の前庭にある感覚受容器で感じとっている感覚。

※固有感覚:筋肉や関節や靭帯にある感覚受容器で感じとっている感覚

もし固有感覚に異常があると、視覚や前庭覚が頚部の固有覚の働きを補おうとしますが、補いきれなくなると視覚や前庭覚も異常を起こすようになります。そしてミッドライン(中心軸)が乱れ、身体は捻れたり傾いたりした姿勢なります。私の経験では、それが顎関節の歪みの原因になっているケースによく出会います。

頚部の固有感覚に対しては手技療法にてアプローチする事も多いのですが、下半身や体幹の固有感覚エクササイズ(バランスディスクやバランスボールなどで)や舌骨の調整などが必要な人もいます。

歯科治療後の噛み合わせの違和感について

歯科治療の後に歯の高さが合っていないような感じがしても、「馴染むまでしばらく様子を見てください」と言われる事が多いと思います。または、歯を削って噛み合わせを調整してもらってもやはり違和感が消えない場合も多くあります。

実はそのような場合は、歯科治療の時に顎関節や頭蓋骨に大きな負担がかかったのが原因であり、歯の高さは関係ない可能性が高いです。そして、当院でやっているような顎関節・上部頸椎の矯正や咀嚼筋のリリースによって解決できる場合が多くあります。

また、顎関節症には、歯科医で歯や詰め物を削ったり、マウスピースを作成するなどの咬合治療(噛み合わせ治療)が有効な場合がありますが、実際には咬合(噛み合わせ)が原因の顎関節症はそれほど多くはないと思います。

顎関節のクリック音について

顎関節のクリック音は施術すると消える事がありますが、顎関節の摩耗がある程度進行している場合はクリック音は消えません。

ですから、クリック音を消す事だけを目的とした施術は当院ではしません。

中枢神経感作による顎関節症

どこにいっても原因がよくわからない顎関節症は中枢性感作が原因かもしれません。

中枢性感作とは、中枢神経の問題により感覚過敏になっている状態です。

中枢性感作は痛覚過敏、光過敏、聴覚過敏、嗅覚過敏、粘膜の知覚過敏など様々な過敏症に関連しています。

以下のような症状は感覚過敏という共通点があります。

  • 線維筋痛症→疼痛過敏
  • 慢性疲労症候群→光過敏、聴覚過敏
  • 過敏性腸症候群→腸粘膜の過敏
  • 機能性ディスペプシア→胃粘膜の過敏
  • 咽喉頭異常感症(ヒステリー球)→咽喉頭の粘膜の知覚過敏
  • 舌痛症・口腔内灼熱症候群(バーニングマウス症候群)→舌や口腔の疼痛過敏
  • 特発性の歯痛・顔面痛→歯や顔面の疼痛過敏
  • 顎関節症→顎関節の知覚過敏
  • むずむず脚症候群→脚の知覚過敏

中枢性感作が関係しているこのような症状を中枢性感作症候群と呼ぶ事もあり、その代表的な症状が線維筋痛症です。

では中枢性感作の原因は何でしょうか?

それはグルタミン酸の興奮毒性です。グルタミン酸というのは中枢神経における興奮性の神経伝達物質で、これが正常に(適度に)働いていれば記憶や学習などの脳の高次機能システムに重要な役割を果たします。しかし過剰なグルタミン酸は脳の興奮性を亢進させ、その興奮毒性により中枢神経を傷害してゆきます。


グルタミン酸の興奮毒性の原因

(1)まず考えられるのがストレスです。グルタミン酸神経の働きはストレスによって増強するからです。ストレス対策は非常に重要になります。

(2)それからGAD(グルタミン酸デカルボキシラーゼ)という酵素の活性低下が考えられます。グルタミン酸はGADによってGABA(ガンマアミノ酪酸)という抑制性の神経伝達物質、つまり脳の興奮を抑え精神を安定させる物質に変わります。睡眠薬はこのGABAの働きを良くして脳の興奮を抑える働きがあります。

そのGADの酵素活性が低下すると、グルタミン酸とGABAがアンバランスになり、グルタミン酸の興奮毒性が増大します。そのGADの酵素活性を低下させる要因には以下のようなものがあります。

  • 遺伝
  • 重金属(特に水銀と鉛)
  • ウイルス
  • 抗GAD抗体(インスリン依存性糖尿病の患者に多い)

(3)グルタミン酸受容体(特に重要なのがNMDA型グルタミン酸受容体)が過剰に活性化する事も興奮毒性の増大に繋がります。マグネシウムや亜鉛にはグルタミン酸受容体の活性を落ち着かせる働きがあります。

グルタミン酸の興奮毒性に対する栄養療法

グルタミン酸の興奮毒性を栄養療法で抑えるには以下のようなアプローチが考えられます。私の場合は全てARテストによって必要なサプリメントを調べています。

活性酸素対策
複数あるグルタミン酸の受容体の中で、代表的なNMDA型グルタミン酸受容体の感受性は活性酸素に敏感に反応して活発になるので、活性酸素対策は重要です。
※活性酸素についてはこちらのページで詳しく解説しています。
重金属の解毒
重金属、特に水銀と鉛はGADの働きを抑制するので、重金属対策は重要です。
※重金属についてはこちらのページで詳しく解説しています。
P5P(ビタミンB6の活性化型)の摂取
ビタミンB6はGADの補酵素です。GADを活性化させグルタミン酸をGABAに変換させるために使います。遺伝的にGADの活性が低下している人には特に重要です。
NAC(Nアセチルシステイン)の摂取
NACは脳内のグルタミン酸レベルを調整する働きがあります。またその抗酸化作用や解毒作用もグルタミン酸の興奮毒性の抑制に役立ちます。
マグネシウムと亜鉛の摂取
マグネシウムや亜鉛がNMDA型グルタミン酸受容体の活性を落ち着かせる働きがあります。

中枢性感作症候群のための心理療法のポイント

私達の自律神経は、通常、安心・安全な状況や環境においては落ち着きます。例え生命の危険を感じるほどの高強度・高衝撃のトラウマ記憶がまだ整理・統合されずに残っていたとしても、安心・安全な状況や環境においては落ち着く事ができます。

※トラウマとは物語のように時系列に言葉で説明できる記憶ではなく、胸がドキドキするとか、事故の時の断片的な映像や音のような身体感覚の記憶です。

ところが中枢性感作症候群の人は、安心・安全な状況や環境においても落ち着けないという特徴があります。その原因は、通常は自律神経の調節不全を引き起こす事がない日常の小さな刺激にも自律神経が反応しているからです。

また不思議に思われるかもしれませんが、中枢性感作症候群の人の多くは、ポジティブな体験・感情・思考であっても自律神経の調節不全を引き起こします。

ですから、

「最近、まあまあ調子が良かった時はどんな時ですか?」
「最近、嬉しかった事、楽しかった事はありますか?」
「最近、自分が自分らしくいられた時はどんな時ですか?」

このような事を質問してから身体感覚の変化を探してもらうと、不思議な事に「呼吸が苦しくなる」「上半身全体が緊張してくる」などの落ち着かない身体感覚が出てくる人は少なくありません。

中枢性感作症候群の人は、このように非常に小さな刺激に反応して自律神経の調節不全を起こすので、刺激を与える時は通常よりもかなり小さな刺激にする事が超重要です。

「やってもらった!」という満足感を得られる刺激の強い心理療法は長期的にみると逆効果です。何故なら「やってもらった!」という大きな満足感ですら自律神経の調節不全の原因となるからです。

Less is More(少ない方が豊か)とか、Slow is Fast(ゆっくりやるのが早い)と形容されるように、大きく刺激して短期間で大きく変えようとするより、小さく・ゆっくり変化させるほうが後戻りもなく、結局、そのほうが近道となります。

※私の心理療法のやり方についてはこちらのページで詳しく解説しています。