うつ病に対するアプローチ


当院ではフィシオエナジェティック®によって症状の原因を調べています。フィシオエナジェティック®では、腕の長さの変化となって現れる体の反応を読み取りながら治療を進めていきます。これをARテスト(腕長反射)と言います。

※当院では医師のような病気の診断や医療行為はできません。フィシオエナジェティック®はあくまで代替療法であり、現代医学で認められていない事をご了承下さい。


うつ病は重症化すると自殺に至る危険が高い疾患です。うつ病かなと思われる方は、まず精神科を受診されたほうが良いでしょう。特に自殺念慮(死にたい気持ち)が現れているような重症化している場合は私がお手伝いできる域を完全に超えているのでお断りしています。私がお役に立てるかもしれない人は症状が比較的軽い人だけです。


うつ病を改善するポイント / このページの要点

うつ病の原因としては、ストレス、トラウマ、メチル化異常(主に低メチル化)、モノアミンの合成不足、脳を発達させるBDNFの不足、グルタミン酸の興奮毒性、副腎疲労と甲状腺機能低下など。

栄養療法

メチル化が不十分な状態(低メチル化)ではシナプス間隙の神経伝達物質が減少する。逆にメチル化が過剰な状態(高メチル化)だと神経伝達物質が過剰になる。うつ病の人は低メチル化の人が多いが、高メチル化の人もいる。メチル化でよく使うサプリメントはメチオニン、SAMe、亜鉛、メチルコバラミン、メチル葉酸、P5Pなど。セロトニンとドーパミンを合成するために、トリプトファン、チロシン、葉酸、P5Pなどが必要。過剰なグルタミン酸の働きを抑えるにはP5P、NAC、マグネシウム、亜鉛などが必要。

メチル化によって、(1)神経伝達物質の量が決まり、(2)神経細胞の軸索が伸びる事によって脳内ネットワークを形成し、(3)ミエリンを形成する事で軸索の保護や神経細胞の代謝を促している。よってメチル化へのアプローチはストレスに強い脳を作るために非常に重要である。しかしメチル化にいきなりアプローチしても成功しない。

まずは栄養療法の基本的な事からスタートする必要がある。具体的には、水分と電解質の補給(細胞の健全な働きに必須)、酸化ストレス対策、解毒、細胞膜の修復、ミトコンドリアの活性化、リーキーガット、腸内細菌など腸内環境の改善、消化を良くする(胃酸・消化酵素・胆汁などの分泌)など。副腎疲労と甲状腺機能低下に対する栄養療法は基本的な事をするだけでほぼOKであろう。

休養 / ストレス低減

仕事が忙しすぎる、介護疲れ、育児疲れ、パワハラなど、あまりにも大きすぎるストレスが降り掛かっている場合は、休職する、退職する、職場の移動をお願いする、他の人に介護や育児を頼むなどしてストレスを減らし、休養する時間と安心・安全を確保する。しっかり休んで休養と睡眠の時間が確保できるだけで良くなる人も多い。

心理療法

まず取り組むべき事は、ストレスのない状態ではしっかり落ち着いている状態を目指すセラピー。それができてから身体志向のトラウマセラピーを開始する(考え方や感情にアプローチする従来の心理療法はあまり効果がない)。トラウマセラピーは回数をかなりかけて非常にゆっくり取り組む必要がある。短期間でやろうとすればするほど逆効果になる。スロー・イズ・ファスト(ゆっくりやるのが早い)が大切だという事をしっかり理解しておく。

運動

脳を発達させるBDNFはストレス低減と運動によって分泌されるので、運動を習慣化させる事はストレス耐性をあげるためにも非常に重要である。

栄養療法によるアプローチ

メチル化がシナプス間隙の神経伝達物質の量を決定する

メチル化はセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の量に大きく影響します。メチル化が不十分な状態である「低メチル化」と過剰な状態である「高メチル化」では、神経伝達物質の量が違うのです。

※画像はウィキペディアより)

低メチル化タイプの人は、シナプス間隙(神経と神経の間の部分)に放出されたセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の再吸収が促進されます。そのためシナプス間隙の神経伝達物質が不足します。 低メチル化はうつ病や自閉症の人に多いようです。

※医師が処方するSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、その名の通りセロトニンの再吸収を阻害する事によってシナプス間隙のセロトニンを増加させます。

逆に高メチル化タイプの人は、神経伝達物質の再吸収が低下するため、シナプス間隙の神経伝達物質が過剰になります。このタイプの人は統合失調症や双極性障害の人に多いようです。

メチル化に必要な事は、食事中のタンパク質から取り入れたメチオニンが、メチオニン→SAMe→SAH→ホモシステイン→メチオニンと代謝しながらサイクルしていく事です。このサイクルの事をメチル化サイクル(メチレーションサイクル)といいます。メチル化とは、このサイクルの途中にあるSAMeに含まれるメチル基を使った化学反応です。このサイクルが滞るとメチル化も停滞してしまいます。

 

このメチル化サイクルを順調に回転させるために必要な栄養素は以下の通りです。じゃ、これらのサプリメントを全部とればいいかというと違います。人によって必要なサプリメントは違ってきますので、私の場合はARテストでその人に必要なサプリメントを選んでいます。

  • メチオニン
  • 亜鉛
  • メチルコバラミン(ビタミンB12の活性化型)
  • 食事性の葉酸またはメチルコバラミン(葉酸の活性化型)
  • ベタイン(=トリメチルグリシン)
  • P5P(ビタミンB6の活性化型)

メチル化に取り組む前に取り組むべき事は以下のような栄養療法の基本的な対策を先に完了しておくことです。これらの対策を先にしていないと、サプリが吸収されない、栄養素が細胞内に届かない、毒素や活性酸素などがメチル化サイクルを阻害するなどして効果がでません。

  • 水分と電解質の補給(細胞の健全な働きに必須です)
  • 酸化ストレス対策
  • 解毒
  • 細胞膜の修復
  • ミトコンドリアの活性化
  • リーキーガット、腸内細菌など腸内環境の改善
  • 消化を良くする(胃酸・消化酵素・胆汁などの分泌)

モノアミンの合成経路の問題

神経伝達物質のうちセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンは、モノアミンと総称されています。うつ病はこれらのモノアミンの減少が関係している事があります。セロトニンはトリプトファンというアミノ酸から、ドーパミンとノルアドレナリンはチロシンというアミノ酸から合成されます。この合成経路に何らかの問題があるとモノアミン不足になります。

トリプトファン代謝

心を落ち着かせる作用のあるセロトニンは以下の図のように  トリプトファンからトリプトファン水酸化酵素(TPH)、芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)による二段階の酵素反応を経て合成されます。トリプトファン水酸化酵素(TPH)にはBH4という補酵素が必要です。BH4はBH2から変換されてできるのですが、その時に葉酸が必要です。BH2からBH4への変換はメチル化が十分にできている時に促進されるので、低メチル化状態だとセロトニンの合成が低下します次に芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)にはビタミンB6が必要です。


チロシン代謝

ドーパミンは、以下の図のように、チロシンからチロシン水酸化酵素(TH)、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)のによる二段階の酵素反応を経て合成されます。(さらにドーパミンからノルアドレナリンやアドレナリンへと代謝されます)チロシン水酸化酵素(TH)にはBH4という補酵素が必要です。BH4はBH2から変換されてできるのですが、その時に葉酸が必要です。BH2からBH4への変換はメチル化が十分にできている時に促進されるので、低メチル化だとドーパミンの合成が低下します。次に芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)にはビタミンB6が必要です。

グルタミン酸の興奮毒性

グルタミン酸というのは中枢神経における興奮性の神経伝達物質で、これが正常に(適度に)働いていれば記憶や学習などの脳の高次機能システムに重要な役割を果たします。しかし過剰なグルタミン酸には神経細胞を障害する作用(興奮毒性)があります。


グルタミン酸はGAD(グルタミン酸デカルボキシラーゼ)という酵素によってGABA(γアミノ酪酸)という抑制性の神経伝達物質、つまり脳の興奮を抑え精神を安定させる物質に変わります。医師が処方するベンゾジアゼピン系の薬はGABAの作用を強める事によって興奮を抑えてます。GADの酵素活性が低下している原因として以下のような事が考えられます。

  • 遺伝
  • ビタミンB6不足
  • 水銀や鉛
  • 慢性ウイルス感染(ヘルペスウイルス、EBウイルスなど)
  • 抗GAD抗体(インスリン依存性糖尿病の患者に多い

なので、ビタミンB6(活性化型のP5Pがベター)、重金属の解毒のためのサプリメント、慢性ウイルス感染のためのサプリメントなどが有効な人もいます。NAC(Nアセチルシステイン)というサプリメントは脳内のグルタミン酸レベルを調整する働きがあります。またNMDA型グルタミン酸受容体の感受性は活性酸素に敏感に反応して活発になるので、活性酸素対策は重要です。(NACは活性酸素対策のサプリメントとしても大変有効です。)その他に、マグネシウムや亜鉛がNMDA型グルタミン酸受容体の活性を落ち着かせる働きがあります。また、電磁波対策や心理療法が有効な人もたくさんいます。

副腎疲労と甲状腺機能低下とうつ病の関係

副腎疲労や甲状腺機能低下もうつ病の原因となります。2つの疾患はどちらも、ストレス、炎症・免疫異常、低血糖などが原因であり、症状も似ています。

※副腎疲労についてはこちらのページに詳しく書いています。

※甲状腺機能低下についてはこちらのページに詳しく書いています。

心理療法によるアプローチ

うつ病の人がまず取り組むべき課題は、ストレスを減らし、休養する時間を増やす事です。これをせずに栄養療法に取り組んでもあまり効果はないでしょう。具体的には、仕事が忙しすぎる、介護疲れ、育児疲れ、パワハラなど、あまりにも大きすぎるストレスが降り掛かっている場合は、休職する、退職する、職場の移動をお願いする、他の人に介護や育児を頼むなどしてストレスを減らす必要があります。

まず取り組むべき事は、ストレスのない状態、あるいは安心安全な場所ではしっかり落ち着けるようにする事です。そのように、意識が過去や未来ではなく今この瞬間に向いていて、しっかり落ち着いている状態の事を「今ここ」とか「マインドフルネス」といいます。これができるようになるまでに早い人で1~3回、非常に遅い人で1年くらいかかります。回復を焦るあまり、すぐにトラウマセラピーを開始してしまうと結局遠回りになってしまいます。

それができるようになってからトラウマセラピーを開始しますが、トラウマセラピーでは「タイトレーション」や「ペンデュレーション」というテクニックを使って非常に安全に取り組みます。「タイトレーション」とは、巨大なエネルギーをもったトラウマを小さく切り崩して、扱いやすい大きさにして取り組む方法です。「ペンデュレーション」は、トラウマに意識を釘付けにするのではなく、安心・安全を感じられるもの(リソースといいます)にも意識を向けながら、同時にトラウマにも意識(=好奇心)を向ける方法です。この2つのテクニックによってトラウマがもつエネルギーをリソースで包み込むようにする事ができ、トラウマに圧倒される事なく安全に取り組む事ができます。

私の心理療法は主に身体感覚にアプローチする方法です。これは考え方を変えるとか、感情をしっかり感じきるといった従来の方法より安全で効果的な方法です。

※私の心理療法のやり方についてこちらのページに詳しく書いてますのでお読みになってください。

脳の萎縮や損傷を回復させるアプローチ

うつ病には脳の萎縮や損傷が深く関係しています。慢性的なストレスによって脳内に大量に流入するコルチゾールというストレスホルモンが脳、特に海馬の神経細胞を破壊し萎縮させるからです。脳を修復・成長させストレスに強い脳を作るにはBDNF(脳由来神経栄養因子)を増加させる事が必須です。またメチル化は神経細胞の軸索を伸ばして脳内ネットワークを形成したり、神経細胞のカバーであるミエリン(髄鞘)を形成したりする事で健全な脳を作ります。

BDNF(脳由来神経栄養因子)

BDNF(脳由来神経栄養因子)とは、脳細胞の増加や成長を促すタンパク質です。このBDNFの減少が脳に関する様々な障害と大きく関係がある事が明らかになっています。このBDNFはストレス低減と運動によって増加しますので、運動を習慣化する事がうつ病の回復のためにも重要です。うつ病の薬にはBDNFの分泌を促す作用もありますが、薬より運動のほうが効果はあります。

メチル化と神経細胞の発達および脳内ネットワークの形成

※画像はウィキペディアより

「メチル化がシナプス間隙の神経伝達物質の量を決定する」とこのページの最初のほうに書きましたが、メチル化は脳を修復・成長させる事にも非常に重要な働きをしています。PRMT1というメチル化酵素は、メチル化によって神経細胞の軸索という部分を伸ばしてゆき、脳内の情報ネットワークを作ってゆきます。さらに、PRMT1は神経を覆っている絶縁体のカバーであるミエリン鞘の形成にも深く関与しています。ミエリンは軸索の保護や神経細胞の代謝を促しています。なので、ミエリンの形成不全はストレス適応障害の原因となります。

※末梢神経障害の薬として医師が処方するメチコバールという薬は、ビタミンB12にメチル基がついているメチルコバラミン(ビタミン剤)ですが、これはメチル化にかなり関係の深い栄養素です。メチコバールはメチル化を促す事によって末梢神経の修復をしようとしているものと考えられます。

それから、PEMTというメチル化酵素は、ミエリンの材料であるホスファチジルコリンを合成します。そのホスファチジルコリンは、卵や肉などの食品からコリンを十分に摂取できていればPEMTの働きがなくても足りているのですが、多くの人が食事から十分にコリンを摂取できていないので、やはりPEMTの働きは重要です。