ヒスタミン不耐症のアプローチ


当院ではフィシオエナジェティック®によって症状の原因を調べています。フィシオエナジェティック®では、腕の長さの変化となって現れる体の反応を読み取りながら治療を進めていきます。これをARテスト(腕長反射)と言います。

※当院では医師のような病気の診断や医療行為はできません。フィシオエナジェティック®はあくまで代替療法であり、現代医学で認められていない事をご了承下さい。


何かを食べた時に調子が悪くなるという人がほぼ毎日来院されます。「きっと小麦と乳製品が原因なんです!」と原因を確信している人もいれば、何が原因なのかわからない人もいます。そんな人達をARテストで調べてみて、かなり多く反応するのがヒスタミン不耐症です。ヒスタミン不耐症はアレルギーと全く同じ症状が出ますが、本当のアレルギー反応ではないので、仮性アレルギーとも言います。

本当の(狭義の)アレルギーの場合は抗原抗体反応によって免疫細胞からヒスタミンが出ます。。それに対して、ヒスタミン不耐症の場合は、ヒスタミンを分解する酵素が十分に存在しないため、ヒスタミンを多く含む食品を食べると体内にヒスタミンが溢れる事で症状が出ます。

※ヒスタミン不耐症に似た用語に"ヒスタミン中毒"があります。ヒスタミン中毒はヒスタミンを分解する能力が普通にある人でも分解できないくらい高濃度のヒスタミンが蓄積された食品、特に魚類及びその加工品を食べることにより顔面紅潮、頭痛、吐き気、じんましん等が出る食中毒の一種です。

※グルタミン酸ナトリウム(いわゆる味の素)に対する過敏反応の事を中華料理店症候群(チャイニーズ・レストラン・シンドローム)と言われる事がありますが、実はグルタミン酸ナトリウムは関係ない事が多くのエビデンスにより証明されています。そこで注目すべきは、中華料理店症候群の症状(頭痛、顔面紅潮、発汗など)とヒスタミン中毒の症状がほぼ同じだという事です。

以下がヒスタミンを多く含む食品です。

  • 赤身魚(マグロ、カツオ、イワシ、ブリ、サンマ、サバなど)及びそれらの加工品(干物、缶詰など)。※サバやアジ・サンマなど青魚と呼ばれる魚も分類上は赤身魚に含まれます
  • アルコール(特に赤ワイン)
  • チーズ(特に熟成したナチュラルチーズ)
  • ボーンブロス
  • チョコレート
  • 柑橘系の果物やジュース(ただし、レモンはほとんどの人に耐性があります)
  • 肉類:サラミ、一部のソーセージ、コンビーフ、パストラミなど
  • ドライフルーツ
  • 発酵食品:ヨーグルト、キムチなど
  • トマト、ほうれん草
  • お酢(ただし有機リンゴ酢ならOKの人もいる)

「ヒスタミンバケツ」という概念


ヒスタミン不耐症の原因として高ヒスタミン食だけが原因であるような説明をされる事が多いのですが実は他にもあります。ヒスタミンの症状が出るのは、体内のヒスタミンを増加させる要因が大きすぎたり、ヒスタミンを分解する能力が低い場合です。

ヒスタミンを増加させる要因には、高ヒスタミン食、ストレス、腸内細菌異常、花粉やハウスダスト、アレルギー、乗り物での動揺、気圧の変化、エストロゲンなどがあります。これらの要素が複数絡み合って許容量(=ヒスタミンバケツの容量)から溢れるほどヒスタミンが増加した時にヒスタミンの症状が出るのです。食物アレルギーや季節性アレルギーがあってもヒスタミンバケツの容量に余裕があれば症状が出にくくなるでしょう。

そのヒスタミンバケツの容量はヒスタミンを分解する酵素の働き具合によって決まります。ヒスタミンを分解する酵素にはDAO(ジアミンオキシダーゼ)とHNMT(ヒスタミンNメチル基転移酵素)の2つがあります。それぞれ作用する場所が違っていて、DAOは細胞外、HNMTは細胞内で作用します。細胞外のヒスタミンは主に食事に含まれるものと腸内細菌が産生したものですが、もしそれらがDAOで分解できなかった時には細胞内に流入します。

DAOは健全な腸粘膜の細胞から分泌されるので腸内環境を良くするアプローチが必要になります。HNMTはメチル化酵素なのでメチル化のアプローチが必要になります。

多彩なヒスタミン不耐症の症状

かゆみ、湿疹、蕁麻疹、鼻水、鼻詰まり
これらのアレルギー症状にはヒスタミン不耐症も大きく関係しています。

アトピー
ヒスタミンは表皮ケラチノサイト分化を抑制し皮膚バリア機能を障害します。また発汗を抑制するため乾燥肌になったり、かゆみが生じ皮膚を掻く事で炎症が増大します。

乗り物酔い(動揺病)・吐き気
高レベルのヒスタミンは嘔吐反射にも関わっています。なので市販されている乗り物酔いの薬にはヒスタミンの作用を抑える作用があります。

食欲不振
ヒスタミンは満腹中枢を刺激し食欲を低下させる働きがあります。

胃酸逆流
ヒスタミンは胃酸の分泌を過剰に刺激し胸焼けを生じさせる事があります。ですから胃薬にもヒスタミンの作用を抑えるがあります。

悪阻(つわり)
アメリカでは悪阻の薬として抗ヒスタミン剤を混合した薬が使用されています。体内のヒスタミン量を減らす自然療法が"つわり"にも有益なのか、それについては、まだしっかりしたエビデンスはありませんが、おそらく有益だろうと考えられます。

不眠
脳内のヒスタミンは覚醒作用があるのでヒスタミンの作用が強すぎると不眠になります。ですから睡眠改善薬にも抗ヒスタミン剤の一種が使われています。

関節炎や関節リウマチ
ヒスタミンは炎症反応を刺激し関節炎を起こしやすくします。またヒスタミンは関節リウマチの特徴である滑膜細胞の異常増殖を促しています。

片頭痛
過剰なヒスタミンが血管を拡張させ頭痛を起こします。ですから抗ヒスタミン薬が片頭痛の薬として使用されています。

気象病
ヒスタミンは気圧の変化にも反応して分泌されます。ですから、元々ヒスタミンが過剰な体質の人ほど気象病が出やすくなります。

細胞外のヒスタミンにアプローチする

DAO(ジアミンオキシダーゼ)の分泌を良くする事で細胞外のヒスタミンを分解できるようになります。DAOの多くは健全な腸の細胞から分泌されるので、腸内環境を健全にするアプローチが必要です。また腸内環境を健全にする事でヒスタミンを産生するタイプの腸内細菌を減らす事ができます。

DAOの分泌が悪い時は低ヒスタミン食にすると体調が良くなるでしょう。ヒスタミン不耐症の人は食事量を減らして低栄養状態にすると調子が良くなる事があるのですが、それは食事性のヒスタミンが減少するからです。しかしそのような低栄養状態を長く続けるとしだいに体調が悪化します。根本的に解決するためには健全な腸をつくり、食事性ヒスタミンをある程度許容できるようにする事です。

フィシオエナジェティック®において腸内環境を健全にするには以下のような「5Rプログラム」を用います。

5Rプログラム

1)Remove toxins(リムーブトキシン)=重金属・環境化学物質などの毒素を取り除く クロレラ、ガーリック、NAC、モリブデン、ビタミンD3、マグネシウムなど

2)Remove pathogens(リムーブパソジェン)=カンジダなどの病原を取り除く グレープフルーツシード、タイム、ティーツリー、ゴールデンシールなど

3)Replace(リプレイス)=胃酸や消化酵素の代わりになるものを補う ベタインHCL、パンクレアチン、バイルアシッド、ダンデリオン、リンゴ酢など

4)Reinoculate(リインアキュレイト)=プロバイオティクスなど善玉菌を再び取り入れる 乳酸菌、ビフィズス菌など

5)Repair(リペアー)=Lグルタミンなどで腸粘膜を修復する
Lグルタミン、アロエベラ、クルクミン、オメガ3、ビタミンD3,ビタミンAなど

また以下のような事が腸内環境を悪化させます。

  • ストレス 活性酸素を産生し粘膜にダメージを与えます。
  • 抗酸化物質の不足 亜鉛、銅、マンガン、セレン、システインなど抗酸化作用のある栄養素が必要です。
  • カンジダ、バクテリアによる腸粘膜の直接的な侵襲
  • 抗生物質による菌交代現象(善玉菌が減少し、抗生物質に強い悪玉菌が増加する現象)
  • NSAID(非ステロイド性抗炎症薬、いわゆる痛み止め)による腸粘膜の炎症
  • ステロイドによる免疫抑制 免疫力低下に伴いカンジダ菌などが繁殖します。
  • 重金属や環境毒素による免疫力の低下
  • アルコール、タバコ、カフェイン
  • グルタミン(グルタミン酸ではない)の不足 腸粘膜の細胞はグルタミンをエネルギー源としているので、不足すると腸粘膜を修復できなくなります。 グルタミン不足はタンパク質の摂取不足が主な原因です。
  • 短鎖脂肪酸の産生不足(=善玉菌不足) 大腸粘膜の細胞はグルタミンだけでなく短鎖脂肪酸をエネルギー源としています。。短鎖脂肪酸は善玉菌が産生する物質なので善玉菌を増やす必要があります。また短鎖脂肪酸は大腸を酸性に保つことにより悪玉菌の繁殖を防いでいます
  • 炎症を抑える働きのあるオメガ3脂肪酸の不足。あるいは、炎症を促進させる働きのあるオメガ6脂肪酸の過剰摂取。
  • 胃酸・消化酵素・胆汁の分泌不足

 

細胞内のヒスタミンにアプローチする

細胞内の過剰なヒスタミンは主にメチル化されて分解されますので、メチル化が不足している低メチル化の状態ではヒスタミンが過剰になります。メチル化はヒスタミンを分解するだけでなく、過剰なストレスホルモンを分解したり、エストロゲンを分解する働きもあるので、ストレスや生理前でエストロゲンが増加するとメチル化の仕事量が増大する事によりヒスタミンの分解が疎かになります。

よって栄養療法によってメチル化に必要な栄養素を補いながら、心理療法を行ってストレスケアをする必要がある人も多いです。女性の場合はエストロゲンの代謝をよくするサプリメントが必要な人もいます。

メチル化の栄養療法

メチル化に必要な事は、食事中のタンパク質から取り入れたメチオニンが、メチオニン→SAMe→SAH→ホモシステイン→メチオニンと代謝しながらサイクルしていく事です。このサイクルの事をメチル化サイクル(メチレーションサイクル)といいます。メチル化とは、このサイクルの途中にあるSAMeに含まれるメチル基を使った化学反応です。このサイクルが滞るとメチル化も停滞してしまいます。

このメチル化サイクルを順調に回転させるために必要な栄養素は以下の通りです。じゃ、これらのサプリメントを全部とればいいかというと違います。人によって必要なサプリメントは違ってきますので、私の場合はARテストでその人に必要なサプリメントを選んでいます。

  • メチオニン
  • 亜鉛
  • メチルコバラミン(ビタミンB12の活性化型)
  • 食事性の葉酸またはメチルコバラミン(葉酸の活性化型)
  • ベタイン(=トリメチルグリシン)
  • P5P(ビタミンB6の活性化型)

※メチル化についてはこちらのページでさらに詳しく解説しています。