低血糖に対するアプローチ


当院ではフィシオエナジェティック®によって症状の原因を調べています。フィシオエナジェティック®では、腕の長さの変化となって現れる体の反応を読み取りながら治療を進めていきます。これをARテスト(腕長反射)と言います。

※当院では医師のような病気の診断や医療行為はできません。フィシオエナジェティック®はあくまで代替療法であり、現代医学で認められていない事をご了承下さい。


低血糖を改善させるポイント / このページの要点

隠れ低血糖

糖尿病で血糖値を下げる薬を使用している訳でもなく、また健康診断での血糖値も異常が無くても実は低血糖が隠れている事がある。そのような隠れ低血糖には、食後高血糖から食後低血糖になる反応性低血糖や、長時間何も食べない時に起こる空腹時低血糖がある。空腹時低血糖は特に就寝中に起こりやすい(夜間低血糖)。低血糖の反動で再び高血糖になる事もある。高血糖→低血糖→高血糖のように血糖値がジェットコースターのように乱高下する現象を血糖値スパイクと言う。

低血糖の症状

日中に低血糖になる人は食後の眠気やだるさを感じる事が多い。夜間低血糖の場合は朝起きられなかったり、熟睡できない事による日中の倦怠感やうつ症状がでる事が多い。低血糖から高血糖に急上昇する時のアドレナリンやノルアドレナリンの作用によって緊張やイライラや火照りなどの交感神経症状がでる事もある。それが夜間であれば悪夢を見たり、食い縛り、寝汗をかいてうなされたり、起床時の頭痛などの症状が出る。

食後低血糖

食後低血糖の最大の原因はインスリン抵抗性である。インスリン抵抗性を改善するには、慢性炎症、肥満/過食、運動不足/筋肉不足、腸内細菌異常/短鎖脂肪酸不足、酸化ストレスなどにアプローチする。その他、イノシトール、マグネシウム、カルシウム、ビタミンD3、Rリポ酸などはインスリン抵抗性改善効果がある。恐らくこの中で最も効果的なのは運動をして筋肉をつける事であろう。

空腹時低血糖

空腹時低血糖の最大の原因は副腎疲労である。副腎疲労を改善するには、慢性的な低栄養状態、慢性炎症、ストレスなどに対してアプローチをする事が重要である。特に長時間何も食べなかったり摂取カロリーが不足している慢性的な低栄養を無くすことが最も重要であろう。慢性的な低栄養の原因として食欲不振が関わっている事が多い。その食欲不振の原因として、機能性ディスペプシア、ヒスタミン、コレシストキニン、オルトレキシア、痩せ願望などがある。

食欲不振へのアプローチ

機能性ディスペプシアの人は食事をしても胃の上部が拡張しないため膨満感で苦しくなったり、ムカムカして気持ち悪くなる。また胃から十二指腸へ食べ物を排出するスピード(胃排出能)も通常より遅いため胃の中に食べ物が滞留する時間が長くなる。さらに胃が知覚過敏の状態に陥っていることで正常な胃酸分泌でも灼熱感、痛みやなど引き起こします。機能性ディスペプシアを改善するためにはストレスケアや慢性炎症にアプローチする必要である。

ヒスタミンは満腹中枢を刺激し食欲を低下させる働きがある。胃酸の分泌を刺激し胸焼けを生じさせたり、嘔吐中枢を刺激し吐き気を生じさせる作用もある。過剰なヒスタミンのその他の症状として、かゆみ・湿疹・花粉症などのアレルギー症状、乗り物酔い、片頭痛、不眠、下痢、悪阻(つわり)、耳鳴り、喘息/運動誘発性喘息などがある。食欲不振の人がこのような症状を併せ持っている事が多いのにはヒスタミンが関係している。ヒスタミンを分解する酵素にはDAO(ジアミンオキシダーゼ)とHNMT(ヒスタミンNメチル基転移酵素)の2つがある。DAOの酵素活性を良くするためには健全な腸内環境を作る事である。HNMTの酵素活性を良くするためにはメチル化のアプローチが必要であるが、いきなりメチル化に取り組むと失敗する。まずは栄養療法の基本的な事とストレス低減からはじめる。

コレシストキニンは満腹中枢を刺激し食欲を抑制する働きがあるホルモンである。もし消化力が悪いために未消化の食べ物が腸内に小腸に長く留まっていると、コレシストキニンの分泌も続き、の間は満腹中枢が刺激され、胃排出も抑制されたままになり、食欲が無くなったり胃もたれをおこす。コレシストキニンによる食欲抑制を解除するには、膵酵素や胆汁の分泌を良くするアプローチを行う。胆汁の分泌を良くするためには胆汁の親水性を高めるサプリメントを使う。

隠れ低血糖になる機序

一般の方にとって血糖値の問題が判明するのは健康診断で高血糖になっている時です。そして通常、低血糖の事が問題にされるのは糖尿病で血糖値を下げる薬を使っている人です。しかし実際は、健康診断で血糖値に異常が無くても、ましてや糖尿病では無くても、血糖値の異常があり、低血糖を起こしている謂わば「隠れ低血糖」の人が多い事がよく知られるようになってきました。

食後低血糖

健康な人であれば食後に血糖値が上昇するとインスリンの働きにより緩やかに血糖値が下がるため食後高血糖にはなりません。しかしインスリン抵抗性と言ってインスリンの効きが悪い人は血糖値が上昇しすぎて食後高血糖が起こりやすくなります。

そして、その状態を何とかしようと膵臓は追加でインスリンを過剰に分泌して血糖値を下げようとします。その結果、インスリンの作用が時間差で遅れて出て来た時に血糖値が急激に下がりすぎてしまい食後低血糖になります。このような機序で低血糖になる事を「反応性低血糖」とも言い、血糖値がジェットコースターのように乱高下する事を「血糖値スパイク」と言います。食後の眠気は食後低血糖の代表的な症状です。食後低血糖の改善のためにはインスリン抵抗性にアプローチします。

空腹時低血糖

健康な人であれば空腹時でも低血糖にはなりませんが、血糖値を上げるホルモンの分泌が悪くなると空腹時に低血糖を起こします。特に長時間何も食べない就寝中に低血糖が起こりやすくなります。夜間低血糖の症状としては、朝起きられなかったり、日中の倦怠感やうつ症状が出る事があります。起立性調節障害も夜間低血糖の症状です。

また慢性的な低栄養の人は低血糖の時にエネルギーとして消費される中性脂肪の値も低くなっている人が多いです。通常、中性脂肪値は30mg/dlまでは正常とされるのですが理想は90mg/dlくらいで、70mg/dl以下は改善の必要があります。

空腹時低血糖の改善方法は主に副腎疲労にアプローチになります。副腎の負担を減らすために、まず1日に必要なカロリーをしっかり摂取する事や、食事を抜いたりして長時間食べない時間を無くす事に取り組む必要があります。また、コルチゾール(副腎皮質ホルモン)には血糖値を上げる作用の他にも、抗炎症作用や抗ストレス作用もあるので、炎症やストレスにアプローチして副腎の負担を減らす事も重要です。

低血糖の時の交感神経症状

低血糖の状態になった時に血糖値を上げるホルモン(コルチゾールやアドレナリンなど)が過剰に分泌されると交感神経症状が出る事があります。具体的には、日中であれば緊張や不安やイライラ、夜間であれば悪夢を見たり、食い縛り、寝汗をかいてうなされたり、起床時の頭痛などの症状がでます。

食後高血糖/反応性低血糖のアプローチ

血糖値スパイクを改善するための方法はインスリン抵抗性にアプローチをする事です。ではどのようにしてインスリン抵抗性にアプローチすればよいのでしょうか?

慢性炎症

慢性炎症はインスリン抵抗性の大きな原因です。病院の検査ではCRPというのが炎症を示す項目なのですが、CRPは感染症などで急性炎症がある時に反応するもので軽い慢性炎症には反応しません。インスリン抵抗性はCRPで正常値と判定されるほどの軽い慢性炎症でも原因となります。慢性炎症の原因として肥満、活性酸素、リーキーガット(腸漏れ)、腸内細菌異常、病巣感染(主に副鼻腔、顎骨、口蓋扁桃)、重金属中毒などがあります。私の場合はARテストによって何が慢性炎症の原因なのかを調べて、必要なサプリメントのアドバイスや心理療法などを提供しています。

肥満および過食

肥満はインスリン抵抗性を引き起こす慢性炎症の非常に大きな原因です。肥大化した脂肪細胞はTNFαや遊離脂肪酸など炎症の原因となる数種類の物質を分泌しています。具体的には、身長と体重から算出するBMI指数で25以上、体脂肪率はが男性で20%以上、女性で30%以上が肥満の目安となります。理想的な体重はBMI指数で22くらいです。痩せ願望がある女性は肥満でもないのに太っているという「認知の歪み」がある事がありますので、このような客観的なデータを参考にしてください。

※BMI指数はこちらのサイトで簡単に計算できます
https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228732

肥満を解消するため無理なダイエットをすると低血糖になり本末転倒です。過食を避け、運動を習慣化する事が大切です。また、インスリン抵抗性がある人でも過食を避ける事によって血糖値スパイクをある程度軽減する事ができます。

ただし、過食をどうしてもやめられないという人もいるでしょう。そのような人はストレスや栄養不足によりセロトニンやドーパミンの働きが不足しているのかもしれません。「依存」に関係している脳内報酬系にも問題があるかもしれません。どうしてもやめられない過食を改善するためには心理療法や栄養療法によってセロトニンやドーパミンの作用を高めるような事を行う事もあります。

運動不足および筋肉不足

運動をすると骨格筋によるインスリンの取り込みが促進されるため、インスリン抵抗性の改善にとても効果的です。2~4数週間の運動では肥満を解消する事は非常に難しいですが、それでもインスリン抵抗性が改善する事もあります。

軽い運動よりも激しい運動のほうがインスリン抵抗性の改善に効果があるというエビデンスがありますが、今まで運動不足だった人にいきなり激しい運動はおすすめできません。またよく歩くようにするだけでも効果はあります。ただし、インスリン抵抗性改善のためにはストレッチやヨガのようにエネルギーをあまり消費しない運動は不向きで、しっかりエネルギーを消費する運動をするべきです。

インスリン抵抗性のために一番効果が高い運動は筋トレです。なぜなら筋肉量が不足している事もインスリン抵抗性の原因だからです。また、肥満の人だけでなく痩せている人にもインスリン抵抗性が多いのですが、それは筋肉量がかなり不足しているからです。しかし私の勧めに従って筋トレを始める人はあまりいません。特に女性は筋肉が全然足りないにも関わらず、自分は筋肉質だと勘違いしている人や、筋トレをして筋肉が付きすぎる事を心配する人がいます。そして、そのような勘違いや無駄な心配がインスリン抵抗性を改善するための障壁となります。

腸内細菌異常および短鎖脂肪酸不足

腸内細菌の善玉菌が作り出す短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、および酪酸)にはインスリン抵抗性を改善する作用があります。ですから腸内環境を整え短鎖脂肪酸を増やすアプローチが必要な人もいます。

酸化ストレス

過剰な活性酸素による酸化ストレスはインスリン抵抗性の大きな原因です。酸化ストレスの原因は抗酸化物質の不足やストレスなどです。抗酸化物質となるサプリメントを使用したり、心理療法を行う事によって過剰な活性酸素を減らす事ができます。

インスリン抵抗性を改善させるサプリメント

イノシトール、マグネシウム、カルシウム、ビタミンD3、Rリポ酸などはインスリン抵抗性への効果が認められています。私の場合はARテストによってどのサプリメントがインスリン抵抗性に効果があるのかを調べてからアドバイスしています。

空腹時低血糖のアプローチ

糖尿病ではない人の空腹時低血糖の最大の原因は副腎疲労です。その副腎疲労を改善するには、慢性的な低栄養状態、慢性炎症、ストレスなどに対してアプローチをする事が重要です。特に長時間何も食べなかったり摂取カロリーが不足している慢性的な低栄養を無くすことが最も重要です。

慢性的な低栄養を無くすためには、1日最低でも3回食事して1日に必要なカロリーをしっかり摂取する事が必要です。意識すればしっかり食事できるという人はそれでOKです。しかし、食欲が無いためにしっかり食べられなかったり、食欲はあっても食べると気持ち悪くなるので食べられないという問題があるためにしっかり食事できない人がいます。その原因には機能性ディスペプシア、ヒスタミン、コレシストキニン、オルトレキシア(体に悪いと考える食品を避けることで生じる強迫観念)、痩せ願望などがあります。

機能性ディスペプシア

胃の痛みや胃もたれ、食後の膨満感、不快感があるのに、内視鏡検査などでもガンや潰瘍といった異常が見られない場合、機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)かもしれません。健康診断受診者の約15%、上腹部症状による医療機関受診者の約50%が機能性ディスペプシアと診断されるほどありふれた病気だそうです。

健康な人は食事をすると胃の上部を拡張して食べ物を貯められるようにします。空腹時は40~60mlだった容積は食事をすると1~2リットルまで拡張します。このような胃の拡張機能を専門用語で「胃適応性弛緩」と言います。また胃から十二指腸へ食べ物を排出するスピードも適度に調節さています。このような機能を専門用語で「胃排出」と言います。

機能性ディスペプシアの人は、胃適応性弛緩に問題があり、食事をしても胃の上部が拡張しないため、少食にしないと膨満感で苦しくなったり、ムカムカして気持ち悪くなります。また胃から十二指腸へ食べ物を排出するスピード(胃排出能))も通常より遅いため胃の中に食べ物が滞留する時間が長くなる事も関係しています。さらに胃が知覚過敏の状態に陥っていることで正常な胃酸分泌でも灼熱感、痛みやなど引き起こします。(逆流性食道炎の症状と同じですね)

機能性ディスペプシアの大きな原因はストレスと炎症です。ストレスや炎症があると脳の視床下部からCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が出て下垂体を刺激します。刺激された下垂体は副腎皮質を刺激します。このようにして抗ストレス作用や抗炎症作用があるコルチゾールの分泌を刺激しています。

しかし、CRHは副腎皮質ホルモンの分泌に関与しているだけではありません。迷走神経を介して胃や十二指腸といった上部消化管運動を抑制しているのです(専門用語でCRH2型受容体というのが関係しています)。そのため機能性ディスペプシアとなります。また、CRHは下部消化管運動(結腸)を亢進させます(専門用語でCRH1型受容体というのが関係しています)。それが過敏症腸症候群の原因となります。

また食欲を抑制するホルモンに脂肪細胞が分泌するレプチンがあります。通常、痩せて脂肪細胞が小さくなるとレプチンの分泌が低下し食欲が出てきますが、炎症があるとレプチン様シグナルというのが増加するため食欲が抑制され、「食べたくても食べられない」という状態になります。

機能性ディスペプシアの栄養療法

栄養療法においては基本的な事からスタートする事が大切です。具体的には、水分と電解質の補給(細胞の健全な働きに必須)、酸化ストレス対策、解毒、細胞膜の修復、炎症、リーキーガット、腸内細菌など腸内環境の改善、消化を良くする(胃酸・消化酵素・胆汁などの分泌)などです。特に慢性炎症は活性酸素、リーキーガット(腸漏れ)、腸内細菌異常が原因となっています。これらをARテストで検査し必要なサプリメントを選択します。

炎症がある時に悪化する可能性があるサプリメントは、鉄、葉酸、ビタミンB12などです。鉄は活性酸素対策をせずに摂取するとヒドロキシラジカルというより強力な活性酸素が増加し、炎症を悪化させます。葉酸とビタミンB12は細胞分裂を促す栄養素ですが、慢性炎症の状態で摂取すると細胞の状態の悪い、出来損ないの細胞が増加してしまいます。それが極端に現れた病気がリウマチや癌です。

機能性ディスペプシアの心理療法

(1)心理療法において真っ先に取り組むべき課題は、ストレスを減らし、休養する時間を増やす事です。これをせずに栄養療法に取り組んでもあまり効果はないでしょう。具体的には、仕事が忙しすぎる、介護疲れ、育児疲れ、パワハラなど、あまりにも大きすぎるストレスが降り掛かっている場合は、休職する、退職する、職場の移動をお願いする、他の人に介護や育児を頼むなどしてストレスを減らす必要があります。

(2)機能性ディスペプシアの人の中には思い当たるストレスが無いという人もいます。そのような人の場合、ストレスらしいストレスが何も無くてもしっかり落ち着く事ができず、例え安心・安全な状況でも、自律神経はリラックスモードではなく、サバイバルモードになっています。そして、通常は自律神経の調節不全を引き起こす事がない日常の小さな刺激にも自律神経は反応してしまうのです。そのような人の場合まず最初に取り組むべき課題は、安心・安全な状況においては、落ち着いた身体感覚をしっかり感じられるようにする心理療法から開始します。同時に、自然を感じたり、軽い運動や散歩などをして気分転換を上手にできるように少しずつ変化させてゆきます。

(3)ストレスがない状況では安心・安全を感じてしっかりと落ち着けるようになったら次第にトラウマに取り組み始めます。例えば、受験の事や人間関係や将来の事を考えるだけで自律神経の調節不全を起こし、心臓がドキドキするとか上半身がこわばってくるなどの落ち着かない身体感覚が出てきます。その落ち着かない身体感覚こそがトラウマの記憶です。

トラウマセラピーでは「タイトレーション」や「ペンデュレーション」というテクニックを使って非常に安全に取り組みます。「タイトレーション」とは、巨大なエネルギーをもったトラウマを小さく切り崩して、扱いやすい大きさにして取り組む方法です。「ペンデュレーション」は、トラウマに意識を釘付けにするのではなく、安心・安全を感じられるもの(リソースといいます)にも意識を向けながら、同時にトラウマにも意識(=好奇心)を向ける方法です。この2つのテクニックによってトラウマがもつエネルギーをリソースで包み込むようにする事ができ、トラウマに圧倒される事なく安全に取り組む事ができます。

私の心理療法は主に身体感覚にアプローチする方法です。これは考え方を変えるとか、感情をしっかり感じきるといった従来の方法より安全で効果的な方法です。

ヒスタミン過剰体質

ヒスタミンは満腹中枢を刺激し食欲を低下させる働きがあります。胃酸の分泌を刺激し胸焼けを生じさせたり、嘔吐中枢を刺激し吐き気を生じさせる作用もあります。よってヒスタミン過剰体質を改善する事によって食欲が出るようになったり、胸焼けや吐き気を抑える事ができる可能性があります。実際に、胃薬や吐き気止めの薬に抗ヒスタミン作用のある薬が使われていますし、抗ヒスタミン作用のある抗精神病薬を服用する事で食欲が出る人もいます。

過剰なヒスタミンのその他の症状として、かゆみ・湿疹・花粉症などのアレルギー症状、乗り物酔い、片頭痛、不眠、下痢、悪阻(つわり)、耳鳴り、喘息/運動誘発性喘息などがあります。食欲不振の人がこのような症状を併せ持っている事が多いのにはヒスタミンが関係しています。

ヒスタミンを分解する酵素にはDAO(ジアミンオキシダーゼ)とHNMT(ヒスタミンNメチル基転移酵素)の2つがあります。それぞれ作用する場所が違っていて、DAOは腸管から吸収される前の細胞外のヒスタミンを分解し、HNMTは細胞内に取り込まれた後のヒスタミンに作用します。

DAO(ジアミンオキシダーゼ)によるヒスタミンの分解を促進させる

DAOは健全な腸粘膜の細胞から分泌されるので腸内環境を良くするアプローチが必要になります。リーキーガットや腸内細菌異常を調べて必要があればサプリメンテーションするとDAOの分泌が良くなります。またDAOの分泌が悪い人はヒスタミンの多い食品を控えると改善する事もあります。ただしストイックに控え過ぎるとさらに痩せてしまうので程々に控える事がポイントです。遺伝的にDAOの活性が低い人もいます。その場合はヒスタミンが豊富な食材を控える事に加えて、DAOの活性に必要な銅とカルシウムを摂取したり、DAOそのもののサプリメントやケルセチンを使うと良いかもしれません。

ヒスタミンが多い食品

赤身魚(マグロ、カツオ、イワシ、ブリ、サンマ、サバなど)及びそれらの加工品(干物、缶詰など)、アルコール(特に赤ワイン)、チーズ(特に熟成したナチュラルチーズ)、ボーンブロス、チョコレート、柑橘系の果物やジュース(ただし、レモンはほとんどの人に耐性があります)、サラミ、一部のソーセージ、コンビーフ、ドライフルーツ、発酵食品、トマト、ほうれん草、酢など

メチル化によるヒスタミンの分解を促進させる

細胞内に存在するヒスタミンはメチル化によって分解されますので、メチル化が不足している低メチル化の状態ではヒスタミンが過剰になります。

すべての症状に共通する事なのですが、メチル化に取り組む前に栄養療法の基本的な事からスタートする事が大切です。具体的には、水分と電解質の補給(細胞の健全な働きに必須)、酸化ストレス対策、解毒、細胞膜の修復、炎症、ミトコンドリアの活性化、リーキーガット、腸内細菌など腸内環境の改善、消化を良くする(胃酸・消化酵素・胆汁などの分泌)などです。メチル化はこれらができてから取り組む必要があります。これらの対策を先せずメチル化に取り組んでも効果がありません。

メチル化に必要な事は、食事中のタンパク質から取り入れたメチオニンが、メチオニン→SAMe→SAH→ホモシステイン→メチオニンと代謝しながらサイクルしていく事です。このサイクルの事をメチル化サイクル(メチレーションサイクル)といいます。メチル化とは、このサイクルの途中にあるSAMeに含まれるメチル基を使った化学反応です。このサイクルが滞るとメチル化も停滞してしまいます

このメチル化サイクルを順調に回転させるために必要な栄養素は以下の通りです。じゃ、これらのサプリメントを全部とればいいかというと違います。人によって必要なサプリメントは違ってきますので、私の場合はARテストでその人に必要なサプリメントを選んでいます。

  • メチオニン
  • 亜鉛
  • メチルコバラミン(ビタミンB12の活性化型)
  • 食事性の葉酸またはメチルコバラミン(葉酸の活性化型)
  • ベタイン(=トリメチルグリシン)
  • P5P(ビタミンB6の活性化型)

メチル化はヒスタミンを分解するだけでなく、過剰なストレスホルモンを分解したり、エストロゲンを分解する働きもあるので、ストレスフルな人やエストロゲン過剰体質の女性はメチル化の仕事量が増大する事によりヒスタミンの分解が低下します。よってストレスを低減したり心理療法を受ける事やエストロゲン過剰体質を改善するDIMなどのサプリメントが必要な人もいます。

コレシストキニン

コレシストキニンは満腹中枢を刺激し食欲を抑制する働きがあるホルモンです。主に消化に時間がかかる脂肪やタンパク質を食べた時に小腸から分泌されます。コレシストキニンは膵酵素や胆汁の分泌を刺激して脂肪やタンパク質の消化を促しながら、消化能力を超えた量の食べ物が一気に胃から十二指腸に送り込まれないようにするために、胃排出(胃から十二指腸へ食べ物を排出する事)のスピードを遅くする働きもあります。

もし消化力が悪いために未消化の食べ物が腸内に小腸に長く留まっていると、コレシストキニンの分泌も続きます。その間は満腹中枢が刺激され、胃排出も抑制されたままになるので、食欲が無くなったり胃もたれをおこします。またコレシストキニンには噴門(胃の入り口)を開く作用もあるので、胃食道逆流症(GERD)の原因にもなります。プロテインを飲むと胃が苦しくなるから飲みたくないという訴えをよく聞きますが、恐らくこれもコレシストキニンの働きによるものでしょう。

コレシストキニンによる食欲抑制を解除するには、膵酵素や胆汁の分泌を良くする事です。膵酵素のサプリメントを飲むことにより解決する人もいますが、解決しない人は胆汁の分泌に問題があるのでしょう。

胆汁の分泌が悪い人のサイン

  • 胆汁にはコレストロールの排泄作用があるため、胆汁の分泌が悪いと痩せているのにLDLコレステロール値が高くなる事があります。
  • 胆汁には便を柔らかくしたり腸の蠕動運動を高めて便通を良くする働きがあるため、胆汁の分泌が悪いと便秘になる事があります。
  • 胆汁には小腸や胆管での殺菌作用があるので、胆汁の分泌が悪いとSIBO(小腸内細菌増殖症)になる事があります。SIBOになると小腸で発生した大量のガスによりお腹が苦しくなります。
  • 胆汁にはビリルビンという色素が含まれているため、胆汁の分泌が良いと便の色は黄みを帯びた茶色になります。しかし胆汁の分泌が悪いとこのような健康的な色にはなりません。
  • 胆汁の分泌が悪いと脂肪を吸収できないため水に浮く脂肪便となる事があります。また脂肪便のために便臭がする事があります。
  • 胆汁の分泌が悪いと血清ビリルビン値が増加し、ビリルビンの末梢神経刺激作用により強いかゆみを生じる場合があります。
  • 胆汁の分泌が悪く「うっ滞」した状態が続くと肝臓が悪くなります。

胆汁の分泌を良くするためには、胆汁の親水性を高めるサプリメントを使います。胆汁の親水性を高めるのがホスファチジルコリンや胆汁酸の一種であるウルソデオキシコール酸です。ホスファチジルコリンはできれば食事から直接摂取するのが良いのですが、できなくてもPEMTというメチル化酵素によって合成されます。しかし、様々な原因で低メチル化の状態だったり、PEMTが遺伝的に機能低下していてホスファチジルコリンの合成が苦手な人がいます。その他、ダンデリオンやシリマリンなどのハーブサプリメントが役に立つ人もいます。もちろん、あてずっぽうにサプリメントを摂取するのではなく、どのサプリメントが必要なのかをARテストによって調べる事が必要です。