不眠症へのアプローチ


当院ではフィシオエナジェティック®によって症状の原因を調べています。フィシオエナジェティック®では、腕の長さの変化となって現れる体の反応を読み取りながら治療を進めていきます。これをARテスト(腕長反射)と言います。

※当院では医師のような病気の診断や医療行為はできません。フィシオエナジェティック®はあくまで代替療法であり、現代医学で認められていない事をご了承下さい。

不眠症の改善のためのポイント / このページの要点

よくある原因としては、グルタミン酸による脳の興奮性亢進、悩み事・反芻思考(思考が止まらない)、副腎疲労などによる体内時計の狂い、神経伝達物質の過不足、運動不足など。

そのためには、栄養療法、休養/ストレス低減、心理療法、運動などが必要。

栄養療法
基本的な事からスタートする。具体的には、水分と電解質の補給(細胞の健全な働きに必須です)、酸化ストレス対策、解毒、細胞膜の修復、ミトコンドリアの活性化、リーキーガット、腸内細菌など腸内環境の改善、消化を良くする(胃酸・消化酵素・胆汁などの分泌)。これらの基本的な事でも副腎疲労や甲状腺機能低下やグルタミン酸の興奮毒性にだいたいは対応できる。神経伝達物質の量を決める最大の因子であるメチル化はこれらの基本ができてからにする。

休養/ストレス低減
仕事が忙しすぎる、介護疲れ、育児疲れ、パワハラなど、あまりにも大きすぎるストレスが降り掛かっている場合は、休職する、退職する、職場の移動をお願いする、他の人に介護や育児を頼むなどしてストレスを減らし、休養する時間と安心・安全を確保する。

心理療法
まず取り組むべき事は、ストレスのない状態ではしっかり落ち着いている状態を目指すセラピー。それができてからトラウマセラピーを開始する。

運動
もっとも簡単で一番効果があるのが運動かもしれない。脳を発達させる重要な因子であるBDNF(脳由来神経栄養因子)を増やすためにも運動が必要。

グルタミン酸による脳の興奮性亢進

グルタミン酸というのは中枢神経における興奮性の神経伝達物質で、これが正常に(適度に)働いていれば記憶や学習などの脳の高次機能システムに重要な役割を果たします。

しかし過剰なグルタミン酸によって脳の興奮性が亢進しすぎると眠れなくなります。

また、その興奮毒性によって神経細胞を障害し、様々な病気・疾患に関与しています。例えば、、、

うつ病、感覚過敏、線維筋痛症、不眠症、双極性障害、強迫性障害、自閉症、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、てんかん、脳虚血/脳梗塞、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳変性症、多発性硬化症、緑内障、自閉症、薬物依存、片頭痛、、本態性振戦、、、など。


グルタミン酸の代謝の問題

グルタミン酸はGAD(グルタミン酸デカルボキシラーゼ)という酵素によってGABA(γアミノ酪酸)という抑制性の神経伝達物質、つまり脳の興奮を抑え精神を安定させる物質に変わります。睡眠薬はこのGABAの働きを良くして脳の興奮を抑える働きがあります。

そのGADの酵素活性が低下する原因には以下のような事が関係しています。

  • 遺伝
  • ビタミンB(GADの補酵素)の不足
  • 水銀や鉛の蓄積
  • 慢性ウイルス感染(ヘルペスウイルス、EBウイルスなど)
  • 抗GAD抗体(インスリン依存性糖尿病の患者に多い)

遺伝的な問題がある場合はビタミンB6(活性化型のP5Pがベター)をサプリメントでがっちり補います。その他、水銀や鉛の蓄積がある場合は、重金属のデトックスが必要ですし、慢性ウイルス感染のためのサプリメントなどが有効な人もいます。

NAC(Nアセチルシステイン)というサプリメントは脳内のグルタミン酸レベルを調整する働きがあります。私がARテストで調べてもNACが必要な人が多いです。

グルタミン酸の受容体の問題

複数あるグルタミン酸の受容体の中で、代表的なNMDA型グルタミン酸受容体の感受性は活性酸素に敏感に反応して活発になるので、活性酸素対策は重要です。(NACは活性酸素対策のサプリメントとしても大変有効です。)

その他に、マグネシウムや亜鉛がNMDA型グルタミン酸受容体の活性を落ち着かせる働きがあります。

またストレスによってグルタミン酸作動性神経が過剰に興奮するので、ストレス軽減と心理療法によってストレス耐性を上げる事も重要です。

副腎疲労のため日中は眠く夜になると覚醒する

健康な人であれば副腎皮質ホルモンの分泌は朝にピークに達し、夜に向けて徐々に分泌が低下し、神経系の興奮性も低下してゆきます。

しかし副腎疲労の状態になると、朝の分泌は低下し、午後から次第に分泌しはじめ夜に分泌がピークに達するようになります。そのため夜に寝られずに昼夜逆転になる人や、朝起きれないために起立性調節障害と同じ状態になる人もいます。

※もっと酷くなると、一日中副腎皮質ホルモンの分泌が低下し、一日中ぐったりする人もいます。

副腎疲労になる最大の原因は精神的・肉体的ストレスです。まずは心理療法などでストレス耐性をあげるよりも、減らせるストレスがあるなら減らす事が重要です。(例えば、仕事を減らす、介護や育児を他の人に手伝ってもらう、転職・休職する、別居するなど。)

精神的負荷や肉体的負荷を背負いすぎて頑張りが効かなくなっているのに、その負荷を降ろそうとせず、栄養療法で元気にしてまた以前のように頑張ろうとしてもきっと良くならないでしょう。

また、栄養療法の基本的な事、つまり解毒、活性酸素、慢性炎症、腸内環境(リーキーガット、カンジダも含めて)、ミトコンドリア機能低下などが副腎疲労の原因になっている事もあります。その他に副腎を直接活性化するサプリメントが効果的な人もいます。

※副腎疲労についてはこちらのページに詳しく書いています

デフォルト・モード・ネットワークの暴走

不眠症のよるある原因に寝る時も思考が止まらないという事があります。まるで思考中毒のような状態です。ずっと考えてしまう内容は、不安な事、悩み事、明日の事や、その他どうでもよい事などです。

これにはデフォルト・モード・ネットワークというのが関係しています。

私達は、意識的な作業・課題に取り組んでいる時には、短期記憶を用いた情報処理をするためのワーキングメモリという脳内ネットワーク働かせています。そしてワーキングメモリには集中力や優先順位をつけて同時並行処理(マルチタスク)する能力があります。また、環境に適応する能力。(=古い考え方を捨てて新しい考え方へとシフトする能力)や感情を整理したり調節する能力もあります。ただしワーキングメモリは長くても25分しか持続できません。

それに対し、デフォルト・モード・ネットワークとは、意識的な作業・課題に集中して取り組んでいない時の状態で、「脳のアイドリング状態」とも言えます。デフォルト・モード・ネットワークが沈静化している状態が深くリラックスしている状態です。

しかし、精神的健康度が低い人はこのデフォルト・モード・ネットワークが過活動になっていて、否定的な思考や意識が堂々巡り(反芻思考)している状態、あるいは否定的な思考や意識で彷徨っている状態(マインドワンダリング)になっています。特に、過去や未来への不安や恐怖などネガティブな思考や、自己認識(自分自身について考える事)に関するネガティブな思考が堂々巡りしていています。

ワーキングメモリよりもデフォルト・モード・ネットワークのほうが脳のエネルギー消費量が大きいので、デフォルト・モード・ネットワークが過活動になっていると脳疲労の症状やワーキングメモリが発揮できない症状が現れる事があります。例えば、頭がモヤモヤしてすっきりしない、今さっきの事が思い出せない、やるべき事に集中できない、古い考え方を捨てて新しい考え方へとシフトできない、感情を整理したり調節できないなど。。。

デフォルト・モード・ネットワークの過活動を抑えるには、安心・安全をしっかり身体で感じる事がとても重要になります。

私の心理療法では、デフォルト・モード・ネットワークの暴走を抑え、「今ここ」という落ち着いた感覚を感じられるようにするようにします。これは心理療法で一番最初に行うべき基本的な事でもあります。

神経伝達物質のアプローチ

メチル化

メチル化はセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の量に大きく影響します。メチル化が不十分な状態である「低メチル化」と過剰な状態である「高メチル化」では、神経伝達物質の量が違うのです。低メチル化と高メチル化、どちらの状態も不眠症の原因となります。

※画像はウィキペディアより)

低メチル化タイプの人は、シナプス間隙(神経と神経の間の部分)に放出されたセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の再吸収が促進されます。そのためシナプス間隙の神経伝達物質が不足します。 低メチル化はうつ病や自閉症の人に多いようです。特にセロトニン不足は不眠症の原因になります。

※医師が処方するSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、その名の通りセロトニンの再吸収を阻害する事によってシナプス間隙のセロトニンを増加させます。

逆に高メチル化タイプの人は、神経伝達物質の再吸収が低下するため、シナプス間隙の神経伝達物質が過剰になります。このタイプの人は統合失調症や双極性障害の人に多いようです。

メチル化に必要な事は、食事中のタンパク質から取り入れたメチオニンが、メチオニン→SAMe→SAH→ホモシステイン→メチオニンと代謝しながらサイクルしていく事です。このサイクルの事をメチル化サイクル(メチレーションサイクル)といいます。メチル化とは、このサイクルの途中にあるSAMeに含まれるメチル基を使った化学反応です。このサイクルが滞るとメチル化も停滞してしまいます。

このメチル化サイクルを順調に回転させるために必要な栄養素は以下の通りです。じゃ、これらのサプリメントを全部とればいいかというと違います。人によって必要なサプリメントは違ってきますので、私の場合はARテストでその人に必要なサプリメントを選んでいます。

  • メチオニン
  • 亜鉛
  • ビタミンB12またはメチルコバラミン
  • 食事性の葉酸またはメチルコバラミン
  • ベタイン(=トリメチルグリシン)
  • ビタミンB6

メチル化に取り組む前に取り組むべき事は以下のような栄養療法の基本的な対策を先に完了しておくことです。これらの対策を先にしていないと、サプリが吸収されない、栄養素が細胞内に届かない、毒素や活性酸素などがメチル化サイクルを阻害するなどして効果がでません。

  • 水分と電解質の補給(細胞の健全な働きに必須です)
  • 酸化ストレス対策
  • 解毒
  • 細胞膜の修復
  • ミトコンドリアの活性化
  • リーキーガット、腸内細菌など腸内環境の改善
  • 消化を良くする(胃酸・消化酵素・胆汁などの分泌)

 

セロトニンとメラトニンの代謝

健康な人であれば、セロトニンは朝に光を浴びた時に最も分泌し、メラトニンは夜寝る前に暗くした時に最も分泌します。このようにして概日リズムに関係しています。この概日リズムが崩れる事が不眠症に大きく関係します。

セロトニンとメラトニンはこの図のようにトリプトファンから合成されます。

トリプトファン水酸化酵素(TPH)にはBH4という補酵素が必要です。BH4はBH2から変換されてできるのですが、BH2からBH4への変換はメチル化が十分にできている時に促進されるので、低メチル化状態だとセロトニンの合成が低下します

またTPHはビタミンDによって酵素活性が高まります。そのビタミンDはコレステロールから合成されますが、その合成経路に問題があったり、遺伝的にビタミンD受容体(VDR)に問題があって、ビタミンDが作用しにくい人がいます。

次に芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)にはビタミンB6が必要です。

そして、セロトニンがメラトニンに変換されるにはメチル化が必要なのですが、割と多くの方が低メチル化という状態になっていて、この変換ができていない事があります。

運動不足

もしかしたら不眠症に最も効果的なのは運動かもしれません。運動を開始したその日からぐっすり眠れるようになった人もいます。

また、運動は脳細胞の増加や成長を促すBDNF(脳由来神経栄養因子)を増加させるのに非常に重要です。BDNFはストレス低減と運動によって増加します。そして、このBDNFの減少が脳に関する様々な疾患と大きく関係がある事が明らかになっています。

※研究によると、BDNFを増加させるたために特に効果がある運動はHIIT(ハイ・インテンシティ・インターバル・トレーニングの略)のような強度の高い運動らしいのですが、運動不足で体力が低下した人には適していません。それに、実際には散歩程度の軽い運動でも効果があります。