胃の痛みや胃もたれ・機能性ディスペプシアに対するアプローチ


当院ではフィシオエナジェティック®によって症状の原因を調べています。フィシオエナジェティック®では、腕の長さの変化となって現れる体の反応を読み取りながら治療を進めていきます。これをARテスト(腕長反射)と言います。

※当院では医師のような病気の診断や医療行為はできません。フィシオエナジェティック®はあくまで代替療法であり、現代医学で認められていない事をご了承下さい。

機能性ディスペプシアとは、胃の痛みや胃もたれ、食後の膨満感、不快感があるのに、内視鏡検査などでもガンや潰瘍といった異常が見られない場合につけられる病名です。機能性ディスペプシアは健康診断受診者の約15%、上腹部症状による医療機関受診者の約50%が機能性ディスペプシアと診断されるほどありふれた病気です。


HPA軸と迷走神経

機能性ディスペプシアの大きな原因はストレスと慢性炎症です。そのため、ストレスや慢性炎症にしっかりアプローチする必要があります。

ストレスや炎症があると脳の視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、略してCRHというのが出て下垂体を刺激します。刺激された下垂体からは副腎皮質刺激ホルモン、略してACTHというのが出て副腎皮質を刺激します。そして、刺激された副腎皮質から抗ストレス作用や抗炎症作用があるコルチゾールが分泌されます。このような、視床下部、下垂体、副腎皮質の密接な繋がりの事をそれぞれの英語の頭文字をとってHPA軸といいます。

この時、CRHはHPA軸に作用するだけでなく、迷走神経を介して胃や十二指腸といった消化管の上部の運動を抑制するようにも働きます(CRH2型受容体というのが関係しています)。また、CRHは大腸などの下部消化管に対しては、その運動を亢進させます(CRH1型受容体というのが関係しています)。そして、それが過敏症腸症候群の原因となります。

その結果、「胃適応性弛緩」と「胃排出」という機能に異常がでてきます。「胃適応性弛緩」とは、食事をした時に胃の上部が拡張して食べ物がたくさんはいるようになる事です。それから「胃排出」とは、胃の中にある食べ物を十二指腸へ排出する事を言います。

このようにして「胃適応性弛緩」と「胃排出」という機能に異常が出る事によって、食事をしても胃の上部が拡張しなかったり、胃の中にある食べ物を十二指腸へ排出するスピードが通常より遅くなったりするので、胃もたれや膨満感などがおこります。また、CRHは上部消化管と下部消化管のどちらにたいしても知覚過敏を引き起こします。そのため胃の痛みを感じやすくなります。

機能性ディスペプシアの心理療法

まずストレスを減らし休養する時間を増やす

心理療法において真っ先に取り組むべき課題は、ストレスを減らし、休養する時間を増やす事です。これをせずに栄養療法に取り組んでもあまり効果はないでしょう。具体的には、仕事が忙しすぎる、介護疲れ、育児疲れ、パワハラなど、あまりにも大きすぎるストレスが降り掛かっている場合は、休職する、退職する、職場の移動をお願いする、他の人に介護や育児を頼むなどしてストレスを減らす必要があります。

ストレスのない状況ではしっかり落ち着けるようにする

機能性ディスペプシアの人の中には思い当たるストレスが無いという人もいます。そのような人の場合、ストレスらしいストレスが何も無くてもしっかり落ち着く事ができず、例え安心・安全な状況でも、自律神経はリラックスモードではなく、サバイバルモードになっています。そして、通常は自律神経の調節不全を引き起こす事がない日常の小さな刺激にも自律神経は反応してしまうのです。

そのような人の場合まず最初に取り組むべき課題は、安心・安全な状況においては、落ち着いた身体感覚をしっかり感じられるようにする心理療法から開始します。同時に、自然を感じたり、軽い運動や散歩などをして気分転換を上手にできるように少しずつ変化させてゆきます。

身体感覚にアプローチするトラウマセラピー

ストレスがない状況では安心・安全を感じてしっかりと落ち着けるようになったらトラウマに取り組み始めます。トラウマは身体感覚として記憶されています。例えば人間関係や将来の事をイメージすると、それだけで自律神経の調節不全を起こし、心臓がドキドキするとか上半身がこわばってくるなどの落ち着かない身体感覚が出てくるでしょう。その落ち着かない身体感覚こそがトラウマの記憶です。

トラウマセラピーでは「タイトレーション」や「ペンデュレーション」というテクニックを使って非常に安全に取り組みます。「タイトレーション」とは、巨大なエネルギーをもったトラウマを小さく切り崩して、扱いやすい大きさにして取り組む方法です。「ペンデュレーション」は、トラウマに意識を釘付けにするのではなく、安心・安全を感じられるもの(リソースといいます)にも意識を向けながら、同時にトラウマにも意識(=好奇心)を向ける方法です。この2つのテクニックによってトラウマがもつエネルギーをリソースで包み込むようにする事ができ、トラウマに圧倒される事なく安全に取り組む事ができます。

私の心理療法は主に身体感覚にアプローチする方法です。これは考え方を変えるとか、感情をしっかり感じきるといった従来の方法より安全で効果的な方法です。

慢性炎症への対策

慢性炎症の原因として活性酸素、悪化した腸内環境、肥満、病巣感染、ネクローシスなどがあります。ですから、活性酸素や腸内環境を改善させるサプリメントは有効です。また適度な運動は肥満の改善につながるだけでなく、炎症を抑制する効果もあります。

病巣感染とネクローシスの事はわからない人が多いと思いますので、もう少し詳しく説明しておきます。

まず、病巣感染とは身体のどこかに慢性的な細菌感染や慢性炎症がおきていて、その病巣が起因になって様々な病気を引き起こしている状態です。病巣の好発箇所は、失活歯と言って神経を抜いた歯や歯周病などの歯科領域、それから副鼻腔や扁桃です。そして、その病巣自体にはほとんど症状がなかったり、あっても軽い症状だったりする事が多いので、長い間放置されてしまう事が多いようです。もし病巣感染があった場合、普通の歯科や耳鼻科ではなく、病巣感染について知識があり経験も豊かな歯科や耳鼻科での治療が必要になってきます。

ネクローシスは、出来損ないの細胞が出来た時に、その細胞が破裂するような死に方です。細胞内の物質を撒き散らすように破裂するので、巻き散らかされた細胞内の物質に対して過剰な免疫反応がおこり炎症を誘発します。ネクローシスを防ぐためには、出来損ないの細胞が増えないようにしたり、出来損ないの細胞が出来た時にアポトーシスという周りの細胞に迷惑をかけないキレイな死に方ができるようにする事です。ですから、ネクローシスに対策するためには健全な細胞死であるアポトーシスがしっかりできるようにする事がとても重要です。

そのためには、ATPを産生するミトコンドリアを健全にするアプローチが必要になります。例えば、ビタミンEで細胞膜を保護する、カリウムやマグネシウムなどの電解質を補給する、グルタチオンを増加させて毒素や活性酸素の対策をする、など、今述べたのは一例ですが、その人に合わせて一人ひとり違うミトコンドリア対策をしていく必要があります。

コレシストキニンと胆汁

コレシストキニンは満腹中枢を刺激し食欲を抑制する働きがあるホルモンです。主に消化に時間がかかる脂肪やタンパク質を食べた時に小腸から分泌されます。コレシストキニンは消化酵素や胆汁の分泌を刺激して脂肪やタンパク質の消化を促しながら、消化能力を超えた量の食べ物が一気に胃から十二指腸に送り込まれないようにするために、胃排出(胃から十二指腸へ食べ物を排出する事)のスピードを遅くします。

そのため、未消化の食べ物が小腸に長く留まっていると、コレシストキニンの分泌も長く続きます。その間は満腹中枢が刺激され、胃排出も抑制されたままになるので、食欲が無くなったり胃もたれをおこします。またコレシストキニンには胃の入り口の噴門というところをを開く作用もあるので、胃食道逆流症(GERD)の原因にもなります。

コレシストキニンの分泌が長く続かないようにするには、膵酵素や胆汁の分泌を良くする事です。膵酵素のサプリメントを飲むことにより解決する人もいますが、解決しない人は胆汁の流れに問題があるのでしょう。ちなみに、コレシストキニンの「コレ」は胆汁を意味し、コレシストキンで「胆のうを収縮させるもの」という意味があります。

胆汁の流れが悪い人の兆候としてとして、まず1つ目は、にLDLコレステロール値が高くなる事があります。胆汁にはコレストロールの排泄作用があるからです。2つ目は、便秘です。胆汁には便を柔らかくしたり腸の蠕動運動を高めて便通を良くする働きがあるためです。3つ目に、SIBO(小腸内細菌増殖症)です。胆汁には小腸や胆管での殺菌作用があるからです。4つ目に、便の色が黄みを帯びた茶色にならない事です。胆汁にはビリルビンという色素が含まれているため、胆汁の流れが良いと便の色は黄みを帯びた茶色になります。5つ目に、便が水に浮く脂肪便になったり、脂肪便のために便臭がする事があります。胆汁の流れが悪いと食事の脂肪分の吸収が悪くなるためです。6つ目に、血清ビリルビン値が増加し、ビリルビンの末梢神経刺激作用により強いかゆみを生じる場合があります。7つ目に、肝臓が悪くなる事があります。胆汁の流れが悪く「うっ滞」した胆汁は肝臓を悪化させるからです。

もし胆汁の流れが悪い場合、胆汁の流れを良くするために胆汁の親水性を高めるサプリメントを使います。胆汁の親水性を高めるのがホスファチジルコリンや胆汁酸の一種であるウルソデオキシコール酸です。ホスファチジルコリンはPEMTというメチル化酵素によって合成されます。しかし、様々な原因でホスファチジルコリンの合成が苦手な人がいます。

その他、ダンデリオンやシリマリンなどのハーブサプリメントが胆汁の流れを良くするのに役に立つ人もいます。私の場合、どのサプリメントが必要なのかはARテストによって調べています。