パニック障害について
当院ではフィシオエナジェティック®によって症状の原因を調べています。フィシオエナジェティック®では、腕の長さの変化となって現れる体の反応を読み取りながら治療を進めていきます。これをARテスト(腕長反射)と言います。
※当院では医師のような病気の診断や医療行為はできません。フィシオエナジェティック®はあくまで代替療法であり、現代医学で認められていない事をご了承下さい。
パニック障害改善のためのポイント / このページの要点
原因としては神経伝達物質の異常、トラウマ、貧血、低血糖など。
神経伝達物質の異常として、セロトニン不足、ノルアドレナリン過剰、グルタミン酸過剰が考えられる。それらを改善するためにメチル化対策はとても重要。その他にクライアントによっては神経伝達物質を代謝するCOMT、MAO、DBHなどへのアプローチも必要かもしれない。
パニック障害改善のために重要なのは、栄養療法、休養/ストレス低減、トラウマセラピー。この全てが必要になる。
栄養療法
セロトニンやノルアドレナリンやグルタミン酸などの神経伝達物質の調整、それから貧血や低血糖などへのアプローチが必要。まずは栄養療法の基本的な事から開始する。具体的には、水分と電解質の補給(細胞の健全な働きに必須です)、酸化ストレス対策、解毒、細胞膜の修復、ミトコンドリアの活性化、リーキーガット、腸内細菌など腸内環境の改善、消化を良くする(胃酸・消化酵素・胆汁などの分泌)など。神経伝達物質の調整に重要なメチル化へのアプローチは一番最後に取り組む。
休養/ストレス低減
仕事が忙しすぎる、介護疲れ、育児疲れ、パワハラなど、あまりにも大きすぎるストレスが降り掛かっている場合は、休職する、退職する、職場の移動をお願いする、他の人に介護や育児を頼むなどしてストレスを減らし、休養する時間と安心・安全を確保する。
心理療法
まず取り組むべき事は、ストレスのない状態ではしっかり落ち着いている状態を目指すセラピー。それができてから身体志向のトラウマセラピーを開始する(考え方や感情にアプローチする従来の心理療法はあまり効果がない)。予期不安や広場恐怖をテーマとしたトラウマセラピーは十分な準備ができてから開始する。
パニック障害の栄養療法
メチル化
メチル化は神経伝達物質の量に大きく影響します。メチル化が不十分な状態である「低メチル化」と過剰な状態である「高メチル化」では、神経伝達物質の量が違うのです。
※画像はウィキペディアより)
低メチル化タイプの人は、シナプス間隙(神経と神経の間の部分)に放出されたセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の再吸収が促進されます。そのためシナプス間隙の神経伝達物質が不足します。 低メチル化はうつ病や自閉症の人に多いようです。
パニック障害・不安障害に医師がよく処方するSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、その名の通りセロトニンの再吸収を阻害する事によってシナプス間隙のセロトニンを増加させています。よってSSRIが少しでも効果ある人は低メチル化である事が推測できます。
逆に高メチル化タイプの人は、神経伝達物質の再吸収が低下するため、シナプス間隙の神経伝達物質が過剰になります。このタイプの人は統合失調症や双極性障害の人に多いようです。パニック発作は過剰な神経伝達物質(特にノルアドレナリン)が原因とも考えられているので高メチル化タイプのパニック障害の人もいるようです。
メチル化に必要な事は、食事中のタンパク質から取り入れたメチオニンが、メチオニン→SAMe→SAH→ホモシステイン→メチオニンと代謝しながらサイクルしていく事です。このサイクルの事をメチル化サイクル(メチレーションサイクル)といいます。メチル化とは、このサイクルの途中にあるSAMeに含まれるメチル基を使った化学反応です。このサイクルが滞るとメチル化も停滞してしまいます。
このメチル化サイクルを順調に回転させるために必要な栄養素は以下の通りです。じゃ、これらのサプリメントを全部とればいいかというと違います。人によって必要なサプリメントは違ってきますので、私の場合はARテストでその人に必要なサプリメントを選んでいます。
- メチオニン
- 亜鉛
- ビタミンB12またはメチルコバラミン
- 食事性の葉酸またはメチルコバラミン
- ベタイン(=トリメチルグリシン)
- ビタミンB6
※高メチル化タイプの人にはナイアシンが必要かもしれません。
メチル化に取り組む前に取り組むべき事は以下のような栄養療法の基本的な対策を先に完了しておくことです。これらの対策を先にしていないと、サプリが吸収されない、栄養素が細胞内に届かない、毒素や活性酸素などがメチル化サイクルを阻害するなどして効果がでません。
- 水分と電解質の補給(細胞の健全な働きに必須です)
- 酸化ストレス対策
- 解毒
- 細胞膜の修復
- ミトコンドリアの活性化
- リーキーガット、腸内細菌など腸内環境の改善
- 消化を良くする(胃酸・消化酵素・胆汁などの分泌)
COMT、MAO、DBH
ノルアドレナリンの代謝に関係のあるCOMT、MAO、DBHの機能低下・亢進によってノルアドレナリンが過剰になると、発汗(冷や汗)、動悸、手の震えなどパニック発作の症状(交感神経症状)が出やすくなります。
COMT(カテコール-O-メチル基転移酵素)
COMTは、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、カテコールエストロゲンなどのカテコールアミン類を代謝する酵素です。この酵素の働きが悪いとノルアドレナリンが過剰になりやすくなります。またこの酵素はエストロゲンを分解する酵素でもあるため、この酵素の働きが悪いとPMS(月経前症候群)の症状もで出やすくなります。遺伝的にこの酵素の働きがダウンレギュレーションしている人もいます。この酵素はメチル化酵素の1つなので、対策としては低メチル化のアプローチをする事になります。
MAO(モノアミン酸化酵素)
MAOは、セロトニン、ノルアドレナリン、アドレナリン、ヒスタミン、ドーパミンなどのモノアミン類を代謝する酵素です。この酵素の働きが悪いとモノアミン系の神経伝達物質が過剰になります。また遺伝的にこの酵素の働きがダウンレギュレーションしている人もいます。対策としては、この酵素の補酵素であるビタミンB2を高用量摂取する事です。
DBH(ドーパミンβ水酸化酵素)
DBHはドーパミンをノルアドレナリンに代謝する酵素です。この酵素が過剰に活性化しているとドーパミンが減少し、代わりにノルアドレナリンは過剰になります。DBHが過剰に活性化する原因はこの酵素の補因子である銅の過剰です。対策は銅の拮抗ミネラルである亜鉛を使うことです。
グルタミン酸による興奮毒性
グルタミン酸というのは中枢神経における興奮性の神経伝達物質で、これが正常に(適度に)働いていれば記憶や学習などの脳の高次機能システムに重要な役割を果たします。しかし過剰なグルタミン酸には神経細胞を障害する作用(興奮毒性)があり、様々な病気・疾患に関与しています。
グルタミン酸はGAD(グルタミン酸デカルボキシラーゼ)という酵素によってGABA(γアミノ酪酸)という抑制性の神経伝達物質、つまり脳の興奮を抑え精神を安定させる物質に変わります。グルタミン酸とGABAのバランスが良ければ問題ないのですが、脳が過度に興奮している人はGABAの作用が弱く、グルタミン酸の作用が強くなっています。パニック障害の人に医師がよく処方するベンゾジアゼピン系の薬はGABAの神経伝達を増強させて脳の興奮を抑える薬です。
そのGADの酵素活性が低下している原因として以下のような事が考えられます。
- 遺伝
- ビタミンB6不足
- 水銀や鉛
- 慢性ウイルス感染(ヘルペスウイルス、EBウイルスなど)
なのでビタミンB6(活性化型のP5Pがベター)、重金属の解毒のためのサプリメント、慢性ウイルス感染のためのサプリメントなどが有効な人もいます。
NAC(Nアセチルシステイン)というサプリメントは脳内のグルタミン酸レベルを調整する働きがあります。またNMDA型グルタミン酸受容体の感受性は活性酸素に敏感に反応して活発になるので、活性酸素対策は重要です。(NACは活性酸素対策のサプリメントとしても大変有効です。)
その他に、マグネシウムや亜鉛がNMDA型グルタミン酸受容体の活性を落ち着かせる働きがあります。また、電磁波対策や心理療法が有効な人もたくさんいます。
貧血と低血糖
- 貧血
- 低血糖
- 更年期
- 甲状腺機能亢進症
これらがあるとパニック発作と似たような症状を示す事があります。特に貧血と低血糖はパニック発作と関係が深いでしょう。
貧血
代表的な鉄欠乏性貧血の場合、ただ単に鉄の摂取不足なら鉄を食事かサプリメントで増やすと簡単に解決します。
ただ、鉄剤を飲んでもなかなか鉄が増えない人や鉄剤で調子悪くなる人もいます。その原因は、体内で鉄が増えると酸化ストレスや炎症が増大するために鉄の吸収を阻害する物質が肝臓から出ている事や、鉄がカンジダなどの悪玉菌の餌となっている事が考えられます。
ですから鉄が不足しているからといってすぐに鉄を摂取するのはリスクがあるのです。鉄の摂取を開始する前に、活性酸素対策をしっかり行ったり腸内環境を整える事が重要です。また胃酸の分泌低下も鉄の吸収を悪くしている原因となるので胃酸の代わりとなるサプリメントを摂取する必要もあるかもしれません。
低血糖
血糖値を下げるホルモンはインスリンただ1つですが、血糖値を上げるホルモンはグルカゴン、コルチゾールなど複数あります。交感神経の神経伝達物質であるノルアドレナリンはその1つで低血糖になると血糖値を上げようとして分泌されます。そのため交感神経症状が出やすくなります。
低血糖の原因は、少食だったり食事の回数が少ない事です。血液検査で中性脂肪の値がかなり低い人がいますが、それは低血糖を示唆している可能性が大きいです。食事の量や回数を増やす事ができればいいのですが、神経性食欲不振症や機能性ディスペプシアのために食べられない場合は心理療法によって少しずつ無理なく食べられるようにアプローチします。
糖質や甘いものが多く、タンパク質や食物繊維が少ないために、食後、血糖値が急上昇し、その反動で直後に急降下するという反応性低血糖になっている場合もあります。そのばあいは、タンパク質や食物繊維の摂取量を増やすと糖質や甘いものの摂取量も自然と減るはずです。ストレス発散のために糖質や甘いもの中毒になっている人は、心理療法をやりながら、散歩や自然に親しむなど健康的な方法でストレス発散・気分転換ができるように少しずつアプローチする必要があるでしょう。
パニック障害の心理療法
パニック障害の人の自律神経
従来の自律神経の理論では、交感神経と副交感神経という2つの神経系がシーソーのようにバランスをとっていて、そのバランスが崩れた状態が不健康な状態と言われてきました。また、ストレス状態では交感神経が優位になっていて、リラックスしている時は副交感神経優位になっているので交感神経優位の状態が特に健康に悪いようにも言われる事もありました。
しかし、実際にはそのような従来の理論では説明できない事がたくさんあります。そこで誕生したのが「ポリヴェーガル理論」です。
ポリヴェーガル理論では、自律神経系を2種類ではなく3種類に分類して考えます。それは、、迷走神経系のサブカテゴリである腹側迷走神経複合体と背側迷走神経複合体、それと交感神経です。
- 交感神経はアクセルのような働きで、神経を覚醒させます。
- 背側迷走神経はブレーキのような働きで、神経系を低覚醒にします。
- 腹側迷走神経は、マイルドなアクセルのような働きとマイルドなブレーキの働きがあり、神経系を丁度よい落ち着いた状態にします。人との繋がりを感じる神経でもあります。レジリエンス(ストレス耐性)が高い人はこの神経系がよく発達しています。
- HPA系(視床下部-下垂体-副腎系)は交感神経と同じく神経系を覚醒させます。
パニック障害の人は交感神経と背側迷走神経が同時に活性化している状態で過覚醒になっています。これはアクセルとブレーキを両方同時に全開にしているような状態です。恐怖や不安と一緒に体は極度の緊張で硬直します。このような自律神経系の状態を凍りつき(凍りつき反応)といいます。
パニックと言っても、例えば乗り物で事故が起こった時に乗客がパニック状態になって出口に向かって一斉に向かう時のパニックは凍りつき反応ではなく、逃走反応であり、アクセルの働きである交感神経が全開になっています。
↑図のように、凍りつき反応は、闘争・逃走反応で対処できない時に起こります。パニック発作が頂点に達すると虚脱して失神する場合がありますが、その時はシャットダウンと呼ばれる状態で、背側迷走神経優位でブレーキがかかった結果です。
パニック障害がある人は発症する前から元々凍りつきやすいタイプです。普段はシャットダウン状態でうつっぽかったり、一見普通に見える事があっても感情や感覚に乏しい人も多いです。
心理療法を始める前にまずストレスを減らす必要性があります
パニックはストレス耐性(専門用語でレジリエンスといいます)に比べてストレスが大きいのが原因です。もしあまりにも大きいストレスを感じているのであれば、それを減らす事から始めるべきです。
例えば、仕事が忙しすぎる、介護疲れ、育児疲れ、パワハラ、モラハラなどが大きなストレスになっていませんか?もしそのような大きなストレスがあるなら、仕事を減らす、介護や育児を他の人に手伝ってもらう、転職・休職する、別居するなどしてストレスを減らすという事が大変重要になってきます。
予期不安や広場恐怖に対するトラウマセラピー
まず取り組むべき事は、ストレスのない状態、あるいは安心安全な場所ではしっかり落ち着けるようにする事です。そのように、意識が過去や未来ではなく今この瞬間に向いていて、しっかり落ち着いている状態の事を「今ここ」とか「マインドフルネス」といいます。これができるようになるまでに早い人で1~3回、非常に遅い人で1年くらいかかります。回復を焦るあまり、すぐにトラウマセラピーを開始してしまうと結局遠回りになってしまいます。
それができるようになってからトラウマセラピーを開始しますが、トラウマセラピーでは「タイトレーション」や「ペンデュレーション」というテクニックを使って非常に安全に取り組みます。
「タイトレーション」とは、巨大なエネルギーをもったトラウマを小さく切り崩して、扱いやすい大きさにして取り組む方法です。「ペンデュレーション」は、トラウマに意識を釘付けにするのではなく、安心・安全を感じられるもの(リソースといいます)にも意識を向けながら、同時にトラウマにも意識(=好奇心)を向ける方法です。
この2つのテクニックによってトラウマがもつエネルギーをリソースで包み込むようにする事ができ、トラウマに圧倒される事なく安全に取り組む事ができます。
私の心理療法は主に身体感覚にアプローチする方法です。これは考え方を変えるとか、感情をしっかり感じきるといった従来の方法より安全で効果的な方法です。
※私の心理療法のやり方についてこちらのページに詳しく書いてますのでお読みになってください。