PATM(パトム)を悪化させる思考の癖


パトムを改善するためには、自分の思考の癖について知る必要があります。ちなみに、「パトムに思考の癖なんて関係ない」と否定するのも、後で説明する感情的決めつけという思考の癖かもしれません。

主観優先で客観的な判断ができない思考の癖

自分の周りの人が咳き込んだり鼻をすすったりする現象が自分の体臭のせいなのかを、客観的に判断するためには、複数の信頼できる人に体臭があるかどうか聞いて確認したり、自分がそばにいると咳や鼻すすりをしてしまうのか本人に聞いて確認する必要があります。

その結果、自分がパトムである事を裏付ける客観的根拠が揃ったならば、あなたは確かにパトムなのかもしれません。私のところにも、強烈な体臭があって、その人の近くにいると目や鼻が刺激される人が来院された事があります。だから私はそんな人がいるというのは間違いないと思います。

しかし、パトムで苦しんでいる人は、自分の悩みを相談できる人がいなかったり、相談した時に否定されるのが怖くて相談できないという人が多いと思います。そのため客観的根拠が乏しい状態なのに自分が感じた事(感情・主観)だけで判断し、自分をパトムだと決めつけてしまいます。心理学の専門用語では、自分が感じた事(感情・主観)を事実だと決めつける思考の癖を感情的決めつけと言います。

「パトムに思考の癖なんて関係ない」と否定してしまう人もいるかもしれませんが、その考えも感情的決めつけではないかと疑ってみるべきでしょう。

パトムでお悩みの方には、複数の信頼できる人に体臭があるかどうか聞いて確認したら「体臭はない」と言われたり、自分がそばにいると咳や鼻すすりをしてしまうのか、本人に聞いて確認しても「(自分とは)関係ない」と言われた人もいるでしょう。

それでも、そういった客観的根拠を信じられなくて、自分はパトムだと決めつけている場合には感情的決めつけと同時に心の読みすぎという思考の癖が強く働いています。

心の読みすぎとは人の心を深読みしてネガティブに解釈してしまう思考の癖です。例えば、「体臭は無いよ」と言われても「私に気を使って嘘を言っている」とネガティブに解釈したりします。

周りの反応がやたら気になってしまう思考の癖

パトムの人は、例えば電車の中で誰も反応している人がいなくても、「誰か反応してるんじゃないか」と探し続ける事があります。また電車で反応している人がいると、どうしてもそっちに意識がいってしまいます。このようにネガティブなことに過剰に注目してしまう癖の事を心のフィルターと言います。心のフィルターは危険を察知した時に最初に発動する防衛反応でもあります。

また、「迷惑をかけてはいけない」とか「嫌われていはいけない」という思考の癖が強いために、体臭を過度に恐れている人もいます。そのように「こうであるべき」という思考の癖の事をべき思考といいます。

「迷惑をかけてはいけない」とか「嫌われていはいけない」という気持ちは、社会生活を送る上で必要ですが、その考え方があまりにも強すぎると、とても生きづらく、苦しくなるという事を理解しましょう。

完全無臭を目指す思考の癖

白黒思考とは、「物ごとを白か黒か、はっきりさせたい」と考える思考の癖です。この考え方をしていると、本人が納得できる高いレベルの基準を「満たしている」あるいは「満たしていない」の二択で考え、「まあまあ」という中途半端な状態(白でも黒でもないグレーの状態)を受け入れる事ができません。

パトムでお悩みの方が極端なまでに完全無臭を目指すのも、実はこの白黒思考による完璧主義が原因になっていることがあります。

よく考えてみてください。どんな人でも、暑い日には汗をかいてニオイが気になることもあるし、靴や靴下が少しにおうのも普通のことです。おならだって1日に何回か出るのは、むしろ正常です。なので、「体臭が有ると言えば有るかもしれないけど、そのくらいは問題ない」という中途半端な状態を「まぁ、いっか」と受け入れる事が大切です。

体臭の事だけでなく、日常生活では中途半端な状態でも「まぁ、いっか」と受け入れていくメンタリティがないと、とても生きづらくなります。例えば、完璧を求めすぎて自分を追い込んでしまったり、逆に「完璧にできないならやっても意味がない」と考えてしまい、自ら行動する気力をなくしてしまうこともあります。

物事の一部分だけを見て全体を決めつけてしまう思考の癖

物事の一部分だけを見て全体を決めつけてしまう思考の癖の事を過度な一般化といいます。「木を見て森を見ず」という慣用句がありますが、過度な一般化はまさしくそれです。

この思考の癖が強いとと、ほんのわずかな事例や体験をもとに、「みんながそうである」「いつもそうだ」といった、極端で偏った結論を導き出してしまうことがあります。そして、「みんな」「いつも(絶対)」といった表現を使ってしまいがちです。例えば

  • 職場で1~2人が冷たい態度を取っているだけで、「職場の全員が自分を嫌っている」と思い込んでしまう。
  • 電車に乗ったときに、「自分が電車に乗ると、いつも(絶対)周囲の人がが自分に反応する」と言っているが、実際はいつもではない。反応されない時もある

このような過度な一般化は、小さな問題を大きな問題に変えてしまうので、ネガティブな気持ちをより大きくしてしまいます。

また、過度な一般化は、レッテル貼りとも密接に関係しています。レッテル貼りとは、ある人の一部分の行動や特徴だけを見て、その人全体を決めつけてしまう思考パターンです。ネガティブなレッテルを貼ってしまう癖があると、自分自身や他者に対して非常に厳しくなったり、差別的な判断をしてしまうことがあります。例えば

  • 私は体臭があるから「生きている価値がない人間だ」と極端な自己否定をしてしまう
  • Aさんは自分が体臭を気にしている事を知ってるいるのに嫌がらせのように自分の前で咳をしてくるから「思いやりがない人」だと決めつける

認知の歪みを加速させるパトムのクローズドコニュニティ

パトムで悩んでいる人達だけが参加できるオンラインサロンやクローズドSNSなどのクローズドコミュニティがあります。そこでパトムの情報を仕入れようとする人や、同じ悩みを持つ者同士で交流したい人達が集まっています。

ですが、パトムのクローズドコニュニティに参加するとエコーチェンバー現象という心理現象によってによってトンデモ情報を信じ込てしまう危険性があります。

エコーチェンバー現象とは、自分と同じ意見や価値観を持つ人たちとだけ交流し、その中で情報が繰り返し共有・強調されることで、意見がどんどん偏って強化されていく現象のことです。

ですから、私はパトムのクローズドコニュニティには参加しないようにアドバイスしています。

身体感覚から思考の癖にアプローチする方法

思考の癖(認知の歪み)を改善するためには、認知に働きかける認知行動療法がスタンダードとなっています。しかし、実際には認知に働きかけるだけではうまくいかない人が多いようです。

私の所では、身体感覚に働きかける心理療法をやっていますが、これは認知の歪みを改善するのにも大変効果的です。

認知の歪みを改善するためには、「メタ認知」と言って、自分の考え方を客観的に俯瞰する必要があります。その時に、気持ちだけでなく身体感覚も落ち着いていたほうが、しっかりとメタ認知できます。また身体感覚に刻み込まれたトラウマの記憶が認知の歪みを引き起こしている事も多いので、認知に働きかける前に、身体感覚に働きかける心理療法によってトラウマのエネルギーを解放する必要もある事が多いと思います。