リーキーガット症候群(LGS)について
当院ではフィシオエナジェティック®によって症状の原因を調べています。フィシオエナジェティック®では、腕の長さの変化となって現れる体の反応を読み取りながら治療を進めていきます。これをARテスト(腕長反射)と言います。
※当院では医師のような病気の診断や医療行為はできません。フィシオエナジェティック®はあくまで代替療法であり、現代医学で認められていない事をご了承下さい。
リーキガット症候群(LGS)とは
リーキーガット(Leaky Gut)を直訳すると、「腸もれ」になります。Leaky が漏れやすい、Gut が腸とか消化管という意味です。LGSとか腸管壁浸漏症候群とも言います。ただ、医学的にはリーキーガット症候群という言い方より、腸管の透過性亢進とか、腸管バリア機能の低下という言葉を使う人が多いようです
リーキーガット症候群とは、腸粘膜の障害により、正常なら腸から吸収されない未消化の食物や毒素・有害物質などが吸収され血中に入ることで様々な症状を引き起こす現象を言います。
リーキーガット症候群の事は「腸に穴があく」と説明される事が多いのですが、これは非常に誤解しやしい表現なので私は使いません。実際には、腸の細胞と細胞をくっつけているタイトジャンクション(密着結合)という部分が壊れてしまい、細胞と細胞の隙間から未消化物や毒素やバクテリアなどが体内に入り込むようになった状態をリーキーガット症候群(LGS)といいます。ちなみに、本当に胃や腸に穴が開く状態は「穿孔(せんこう)」といって、もっと恐ろしい病気で入院が必要です。
↑タイトジャンクション(密着結合) 画像はウィキペディアより
↑タイトジャンクションが緩む事で病原体やその毒素が体内に吸収され全身性の炎症反応を誘発する
タイトジャンクションのような粘膜のバリア機能は他にもあります。まず上皮細胞の一つである杯(さかずき)細胞が分泌するムチンという粘液。それから、小腸のパネート細胞が分泌する抗菌ペプチド。そして形質細胞が分泌する分泌型IgAなどです。
↑粘膜バリア
これらの粘膜バリアが破綻した状態は以下のような事を誘発します。
- 吸収上皮細胞のダメージにより栄養素の吸収障害がおこり、栄養不足による症状を誘発する
- 腸という一部位の炎症が起因となり、全身性の慢性炎症を誘発する
- 善玉菌が作り出す酪酸が減少する事により、過剰な免疫応答を抑制的に制御するTreg細胞(制御性T細胞)の分化を誘導できず免疫の暴走を誘発する
- 脳腸相関により、不安や緊張やイライラを感じやすくなったり、様々な自律神経症状を誘発する
- 上皮細胞のダメージにより食物に含まれるヒスタミンを分解する酵素の分泌不足がおこり、様々なヒスタミン症状を誘発する
ヒスタミン不耐症
ヒスタミン不耐症の人はヒスタミンを分解するDAO(ジアミンオキシダーゼ)という酵素の分泌が少ないため、以下のようなヒスタミンを多く含んだ食品を食べた時に様々なスタミン症状がでます。
リーキーガットの人はヒスタミン不耐症になっている事がとても多いです。なぜかというとヒスタミンを分解するDAO(ジアミンオキシダーゼ)は健全な腸粘膜から分泌されるからです。DAO(ジアミンオキシダーゼ)の分泌量と腸粘膜の健康度は比例すると言われています。
ヒスタミン不耐症の症状
- 疑似アレルギー
- 関節炎や関節リウマチ
- 片頭痛
- 気象病
- アトピー
- 乗り物酔い(動揺病)
- 食欲不振
- 胃酸逆流
- 悪阻(つわり)
- 不眠
リーキガット症候群の原因
1.悪玉菌による炎症
善玉菌減少、糖質(特に甘いもの)の食べ過ぎ、鉄、ストレス、水銀、糖尿病、ステロイド、免疫抑制剤、胃酸や胆汁の分泌不足
2. 活性酸素によるダメージ
精神的・肉体的ストレス、抗酸化物質の不足、鉄、重金属、酒、タバコ
3.未消化のタンパク質
グルテン、カゼイン、大豆たんぱく
4.ゾヌリンによるタイトジャンクションの弛緩
グルテン
5.その他
NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)、寄生虫、激辛、絶食
1.悪玉菌による炎症
これは菌糸の状態になったカンジダアルビカンスが、その菌糸を粘膜に突き刺している所です。さらにカンジダリシンという毒素も放出して炎症を起こします。このように悪玉菌は腸粘膜に炎症を起こし粘膜バリアを破壊してゆきます。
↑菌糸形のカンジダ・アルビカンスが粘膜に侵入しているところ。(画像はこちらより)
悪玉菌が増殖する原因として、まず善玉菌の減少があります。善玉菌は不溶性食物繊維やオリゴ糖などを食べて、酪酸や酢酸などの短鎖脂肪酸を作るんですが、その短鎖脂肪酸が腸を悪玉菌が繁殖しにくいph5-6.5の弱酸性にしてくれるからです。
それから、糖質、特に甘いものの食べ過ぎは悪玉菌を繁殖させる原因として非常に大きいです。過剰な糖質は悪玉菌のエサとなるからです。また鉄も悪玉期の格好のエサとなります。
それから、ストレス、水銀、糖尿病、スてロイド、免疫抑制剤などは免疫力を低下させため悪玉菌の増殖を抑えられなくなります。特に形質細胞という免疫細胞が作り出す分泌型IgAが減少することで粘膜バリアが弱くなります。
2.活性酸素によるダメージ
活性酸素は粘膜にダメージを与えます。
そのその大きな原因となるのが、精神的ストレスや肉体的ストレスです。
それから、ビタミンCなどの抗酸化物質の不足です。特に歳をとってくるとサプリメントで抗酸化物質を補給する必要が増大します。
それから、鉄です。鉄は重要なミネラルですが抗酸化対策が十分にできていない状態で摂取すると、ヒドロキシラジカルという活性酸素の中でも超強力な活性酸素ができてしまいます。鉄剤を飲むと胸やけや吐き気、腹痛などの副作用がでる人がけっこういますが、あれは鉄によってヒドロキシラジカルができてしまい、それが粘膜を障害しているからなんです。このように鉄は両刃の剣のような栄養素で、必要なミネラルですが、不用意に摂取すると悪玉菌のエサとなったりヒドロキシラジカルを産生して細胞を駄目にしていく、扱いが難しい栄養素と言えるでしょう。
それから、重金属が溜まっている人とか、お酒やタバコなども活性酸素の原因です。
3.未消化のタンパク質
次に未消化のタンパク質もリーキーガットの原因です。とくにグルテンやカゼインや大豆タンパクは非常に消化が悪く、食べ過ぎると、その未消化物が腸を刺激して炎症を起こします。
ですが、私は「食べすぎなければちょっとくらい食べてもいいですよ」とアドバイスしています。ストイックにやりすぎるのもいろいろと良くないからです。しかし、私はカゼインや大豆のプロテインは絶対におすすめしません。これらは、消化が悪いという特徴を逆手にとって、腹持ちが良いからダイエットに最適などと宣伝される事がありますが、意識的にカゼインや大豆たんぱくを大量にとると腸に良くありません。プロテインの中ではホエイプロテインアイソレートが一番消化が良いので、私は乳製品にアレルギーがなければ、プロテインはホエイプロテインアイソレート一択だと思います。
また、小麦のグルテン由来のグリアドルフィンというペプチドと、乳製品のカゼイン由来のカソモルフィンというペプチドが、腸管の透過性亢進によって未消化のまま血流ににはいると、それが脳に到達して麻薬のような作用を及ぼし、自閉症関連症状や統合失調症の症状と関係があると主張する人達もいます。エビデンスレベルは低いのですが、この理論が自閉症の子の食事としてグルテンフリーやカゼインフリーが良いと推奨されている理由の1つにもなっています。
4.ゾヌリンによるタイトジャンクションの弛緩
小麦のタンパク質であるグルテンは、グリアジンとグルテニンで構成されています。そのグリアジンが上皮細胞の表面にあるグリアジンの受容体にくっつくと、ゾヌリンを細胞内から細胞外を放出します。放出されたゾヌリンは今度は上皮細胞にあるゾヌリンの受容体にくっつきます。するとその信号が内部に伝わり、タイトジャンクションを緩めてしまうのです。その結果、腸管の病原体などがこのように内部に侵入するようになります。
粘膜バリアを回復する方法
1.粘膜を強化する栄養素の摂取
2.酸化ストレスに対するアプローチ
3.ディスバイオシス(腸内細菌叢のバランスが乱れた状態)に対するアプローチ
4.未消化のタンパク質やゾヌリンに対するアプローチ
1.粘膜を強化する栄養素の摂取
グルタミン
粘膜と免疫細胞のエネルギー源です
ビタミンA / ビタミンD / 亜鉛
粘膜を強化するビタミン・ミネラルです
水溶性食物繊維やオリゴ糖
善玉菌のエサとなり、短鎖脂肪酸が増加します。短鎖脂肪酸は大腸粘膜のエネルギー源となったり、腸のphを5~6.5の弱酸性にして悪玉菌が繁殖しにくい環境にします。
様々な抗炎症物質
オメガ3、クルクミン、ブロメライン、ケルセチンなど
2.酸化ストレスに効く栄養素
抗酸化物質のサプリメントはたくさん種類がありますが、私はARテストによってどんな抗酸化物質がその人に必要なのか調べています。様々な抗酸化サプリメントの中で、私が重視しているのはSODという抗酸化酵素とグルタチオンペルオキシダーゼという抗酸化酵素の働きをたかめるサプリメントです。それから過酸化脂質対策のサプリメントも重視しています。
抗酸化酵素のSOD(スーパーオキシドジスムターゼ) を活性化させるもの
亜鉛、銅、マンガン
抗酸化酵素のGPx(グルタチオンペルオキシダーゼ)を活性化させるもの
NAC、セレン、ビタミンB2、ビタミンD3、クルクミン、シリマリン、リポソーマルグルタチオン
過酸化脂質対策
ビタミンE、ビタミンC、CoQ10、NAC、Rリポ酸
3.ディスバイオシスに対するアプローチ
1.糖質(特に甘いもの)の食べ過ぎ
ディスバイオシスを改善させるために、一番重要かもしれない事は、糖質の食べ過ぎ、特に甘いものの食べ過ぎをしない事です。過剰な糖質は悪玉菌のエサとなるからです。
しかし、その反対に過度な糖質制限もディスバイオシスの原因となります。その原因として過度な糖質制限によって穀物に含まれる食物繊維の摂取が不足するためだと考えられています。また糖質の代わりに肉類の摂取が増える事も関係あるかもしれませんし、ある程度の糖質は善玉菌にも必要だからという事も関係あるかもしれません。とにかく過度な糖質制限は絶対にしないようにして下さい。
糖質を制限するのではなく、玄米やオートミールやさつまいもなど、食物繊維の多い未精製の糖質に切り替えるとよいでしょう。甘いデザートやフルーツは完全カットしたほうが良いのです。
2.悪玉菌の除菌
除菌サプリを使うときの注意点としては、まず除菌サプリは悪玉菌だけでなく善玉菌も殺菌するので長期間使わないという事です。
可能ならば除菌のサプリは使わず、善玉菌を増やしたり、免疫力や消化力を上げる事で、悪玉菌が繁殖しにくい環境を作る事で悪玉菌を減らしたほうが良いでしょう。ただ、腸内環境が酷く悪化している場合は除菌サプリが必要かもしれません。
それから、除菌サプリを使うとダイオフという現象が起きる事があります。ダイオフというのは、除菌の際にカンジダなどの悪玉菌が保持していた毒素が放出する事によって調子が悪くなる現象です。特にバイオフィルムを形成している場合は毒素を抱え込みやすいです。バイオフィルムというのは、微生物の集落が多糖類などの物質で覆われている状態の事です。バリアに守られているような状態なので除菌も難しくなります。
ダイオフが起きやすい人は、便通が悪くて毒素が排泄されない人だったり、肝臓の解毒機能が低下していて、悪玉菌が放出した毒素を肝臓で解毒できない人です。ですから、ダイオフ対策としては、便通を良くするとか先に肝臓の解毒機能を良くしておくという方法があります。
便通を良くするには、マグネシウムや十分な水分摂取が効果的です。不溶性食物繊維もいいのですが、痙攣性の便秘の場合は、腹痛などが出て、余計に苦しくなる事があるので注意が必要です。肝臓の解毒機能を高めるには、NAC、グルタチオン、シリマリンなどを使います。それから、チャコールやベントナイトを使って、悪玉菌が撒き散らす毒素や悪玉菌の死骸を吸着させたまま排泄させるという方法もありますが、私はこの方法をアドバイスする事はあまりありません。
3.善玉菌のエサを与える
善玉菌を増やすサプリメントには、プレバイオティクスとプロバイオティクスがあります。プレバイオティクスは善玉菌のエサの事で、水溶性食物繊維やオリゴ糖を使います。プロバイオティクスは善玉菌そのもののサプリメントです。
私の場合、第一選択しとてARテストでプレバイオティクスからその人いあったいいサプリがないか調べます。もしプレバイオティクスに良い物がなかったら、第二選択肢としてプロバイオティクスの中から選びます。しかし、大抵の場合、プレバイオティクスの中から良い物が見つかるので、プロバイオティクスはあまり使いません。
また、プロバイオティクスは生きて住み着くと事はほとんど期待できません。ではプロバイオティクスはどうやって善玉菌を増やすのかというと、善玉菌の菌体成分が善玉菌のエサとなるからです。ですから生きているという事にこだわる必要はありません。むしろ、生きた菌より死んだ菌のほうが効果がある事が研究で明らかになっています。
4.未消化のタンパク質やゾヌリンに対するアプローチ
ずっと続ける必要は無いと思いますが、グルテンフリーやカゼインフリーの食事をするのは確かに良いと思います。ただし、あまりストイックに食事制限するのも精神的に良くないですし、リーキーガットであっても食べすぎなければちょっとくらい小麦や乳製品を食べても大丈夫だと思います。
また、グルテンやカゼインの消化に特化したサプリメントとしてDPPⅣという消化酵素のサプリメントがあります。
リーキーガットのための5Rプログラム
リーキーガットの治療では以下の5つの項目を全て網羅しなければなりません
- 1)Remove toxins(リムーブトキシン)=重金属・環境化学物質などの毒素を取り除く
クロレラ、ガーリック、NAC、モリブデン、ビタミンD3、マグネシウムなど - 2)Remove pathogens(リムーブパソジェン)=カンジダやバクテリアなどの病原を取り除く
グレープフルーツシード、タイム、ティーツリー、ゴールデンシールなど - 3)Replace(リプレイス)=胃酸や消化酵素の代わりになるものを補う
ベタインHCL、パンクレアチン、バイルアシッド、ダンデリオン、リンゴ酢など - 4)Reinoculate(リインアキュレイト)=プロバイオティクスなど善玉菌を再び取り入れる
乳酸菌、ビフィズス菌など - 5)Repair(リペアー)=Lグルタミンなどで腸粘膜を修復する
Lグルタミン、アロエベラ、クルクミン、オメガ3、ビタミンD3,ビタミンAなど
※5Rプログラムはリーキーガットだけでなく、アレルギーや腸内細菌異常がある時も有効です。