重金属・化学物質の解毒(デトックス)について


当院ではフィシオエナジェティック®によって症状の原因を調べています。フィシオエナジェティック®では、腕の長さの変化となって現れる体の反応を読み取りながら治療を進めていきます。これをARテスト(腕長反射)と言います。

※当院では医師のような病気の診断や医療行為はできません。フィシオエナジェティック®はあくまで代替療法であり、現代医学で認められていない事をご了承下さい。

デトックスの基本:脂溶性・水溶性毒素の理解と排出経路


私たちの体に影響を与える毒素は、大きく分けて脂溶性毒素と水溶性毒素の2種類があります。これらは体内での挙動、蓄積の仕方、排出経路が異なるため、それぞれに応じた対策が必要です。

脂溶性毒素:体内に蓄積しやすい“静かな脅威”

脂溶性毒素は脂肪に溶けやすく、水に溶けにくい性質を持ちます。そのため、脂肪組織、細胞膜、脳や神経系に蓄積しやすいのが特徴です。一度体内に入ると排出されにくく、長期間体内に残り、慢性的な影響を与えることがあります。

代表的な脂溶性毒素

  • 環境ホルモン(内分泌かく乱物質): PCB、ダイオキシン、フタル酸エステル、ビスフェノールA(BPA)、PFAS(永遠の化学物質)など。
  • 農薬や除草剤の残留成分: 有機リン系、ネオニコチノイド系農薬、DDTなど。
  • 医薬品や有機溶剤の代謝産物: ベンゾジアゼピン系の薬剤、有機溶媒(ベンゼン、トルエンなど)、全身麻酔薬の一部
  • カビ毒や菌由来毒素: アフラトキシン、オクラトキシンAなど。
  • 一部の重金属(有機化合物として): メチル水銀、有機鉛など。

脂溶性毒素は尿では排出されにくく、胆汁、皮脂、汗を介した排出が必要です。脳への蓄積はブレインフォグや気分障害の一因とも考えられています。

特に注意すべき4大脂溶性毒素

  • ダイオキシン: 極微量でも強い毒性。
  • PCB: 神経系や免疫系への影響
  • PFAS: 代謝されず蓄積。発がんリスクも
  • メチル水銀: 胎児の神経発達に深刻な影響。

水溶性毒素:比較的排出しやすいが急性症状も

水溶性毒素は水に溶けやすく、尿や汗で比較的排出されやすいのが特徴です。大量に取り込まれると、急性の体調不良や炎症反応を引き起こすことがあります。

代表的な水溶性毒素

  • アルコールやアセトアルデヒド
  • アンモニアや乳酸などの代謝老廃物
  • 一部の重金属(無機型): 無機ヒ素、カドミウム、六価クロムなど
  • 細菌やウイルスの産生する毒素の一部: エンテロトキシンなど。

水溶性毒素は腎臓、汗腺、肺を通じて排出されますが、腎機能や代謝力が低下していると排出が追いつかず、疲労感や炎症の原因となることがあります。

デトックスの最優先事項:排出ルートの確保


デトックスで最も大切なのは、毒素を体内で「動かす」ことよりも、安全に「出せる」状態を確保することです。出口が詰まったまま毒素を動かすと、体内で再分配され、かえって体調を悪化させるリスクがあります。

解毒の基本ルート

1.便(大腸)

  • 脂溶性毒素の主要な排出口。肝臓で処理され、胆汁に包まれて腸へ送られ、便として排出されます。
  • 便秘があると「腸肝循環」により毒素が再吸収されるため、腸内環境の整備が重要です。プロバイオティクス、プレバイオティクス、マグネシウム、十分な水分補給、胆汁の流れをスムーズにすることが大切です。
  • 胆汁分泌を促すサプリメントとして、TUDCA、ホスファチジルコリン、ミルクシスル、アーティチョークが有効です。

2.尿(腎臓)

  • 水溶性毒素の主要な排出口です。
  • 水分不足や腎機能低下で滞るため、十分な「水+電解質(ナトリウム、カリウム、マグネシウムなど)」の摂取が不可欠です。

3.皮膚(汗と皮脂)

  • 軽視されがちですが、脂溶性毒素(BPA、フタル酸エステル、一部の重金属など)は汗や皮脂から排出されやすいことがあります。
  • ただし、これはあくまで「便と尿の出口が整った後」の補助的な排出手段として活用すべきです。

肝臓における解毒プロセス:二段階の代謝と栄養サポート


体内に取り込まれる多くの慢性的な毒性物質は脂溶性です。これらは水に溶けにくいため、肝臓で「フェーズ1」と「フェーズ2」という2段階の代謝を経て水溶性の形に変換され、体外へ排出されます。

フェーズ1:毒素の変換と中間代謝産物の生成

シトクロムP450(CYP)という酵素群が毒素に化学的な部品を付加し、フェーズ2で処理しやすい形に変換します。この過程で毒性の高い中間代謝産物(活性代謝物)が生成されるため、速やかにフェーズ2で無毒化される必要があります。フェーズ1の過剰な活性やフェーズ2の能力不足は、毒性中間体の蓄積を招きます。

フェーズ1をサポートする栄養素

  • 鉄:CYP450は「活性部位にヘムを持ち」、その中心にある「ヘム鉄」が活性中心として反応を担っているため。
  • ビタミンC:直接CYP450を活性化するわけではないがヘムを分解する酵素であるヘヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)の発現を抑制することでヘムの過剰な分解を防ぎ、CYP450のヘム構造と酵素量を維持することで、結果的にCYP450の活性を支えている。またその抗酸化作用で酵素の構造と活性を安定化させる。
  • ビタミンB2:FADやFMNという電子伝達に使われる補因子の材料になります。これらは、NADPHからCYP450へ電子を渡す中継役の酵素(NADPH-シトクロムP450リダクターゼ)が働くために必要です。
  • ナイアシン:NADPHというエネルギー分子の材料になります。NADPHはCYP450酵素が酸素を使って毒素を分解するために必要な電子を供給する重要な役割を担っています。
  • マグネシウム:CYP450酵素の補助酵素(ATPを使う反応など)や電子伝達系の安定な働きに関わる必須ミネラルです。また、NADPHやFADといった補因子の生成や利用にも関与しており、これらの反応がスムーズに進むための「潤滑油」のような役割を果たしています。

フェーズ1の活性を調整するフィトケミカル

  • DIM(アブラナ科野菜由来): フェーズ1とフェーズ2を活性化
  • ミルクシスル(シリマリン): フェーズ1を抑制し、フェーズ2を誘導。胆汁分泌も促進
  • クルクミン: フェーズ1の過剰活性を抑制し、フェーズ2を活性化。

フェーズ2:抱合による無毒化と排出準備

フェーズ2では、フェーズ1で処理された中間代謝産物や直接肝臓に入った有害物質に「水溶性の目印」を結合させ(抱合)、完全に無毒化して水に溶けやすい形にします。これにより、尿や胆汁として体外へスムーズに排出されます。

脂溶性毒素の解毒に重要な抱合反応

グルクロン酸抱合

  • アブラナ科野菜の摂取が基本です。
  • 腸内環境を整え、β-グルクロニダーゼによる毒素の再吸収(腸肝循環)を防ぐことが重要です。

硫酸抱合

  • 硫黄化合物の供給が鍵となります。
  • 硫黄を含む食品: 肉類、魚介類、卵、乳製品、大豆、ナッツ類、ネギ類、アブラナ科野菜。
  • サプリメント: プロテイン、NAC(N-アセチルシステイン)、タウリン、MSM(メチルサルフォニルメタン)、ガーリック。
  • 硫黄不耐性がある場合は、モリブデンを併用する検討が必要です。

グルタチオン抱合

  • グルタチオンの前駆体(システイン、グルタミン酸、グリシン)を十分に摂取: 特にNACはシステインの優れた供給源です。
  • グルタチオンのリサイクルを助ける: セレン、ビタミンB2、ビタミンC。
  • グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)の活性化: スルフォラファン、インドール-3-カルビノール(I3C)、DIM(アブラナ科野菜由来)、クルクミン、ローズマリー。

細胞内デトックスの実践戦略:3つのステップ


肝臓や腸だけでは処理しきれない細胞内の毒素を排出するためには、「細胞そのものの力」を高めることが重要です。

ステップ1:細胞膜の修復と強化

健全な細胞膜は毒素の侵入を防ぎ、細胞内の毒素排出を助けるバリアとして機能します。

必要な栄養素

  • リン脂質(ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンなど): 細胞膜の主要構成要素。
  • オメガ3脂肪酸: 細胞膜の柔軟性を高め、炎症を抑制。
  • ビタミンE(特にγ-トコフェロールを含むもの): 細胞膜を酸化から保護。
  • 亜鉛・マグネシウム: 輸送タンパク質の機能に必須。
  • 抗酸化物質(グルタチオン、NAC、セレンなど): 細胞膜や輸送タンパク質を保護。
  • フィトケミカル(スルフォラファン、クルクミンなど): 輸送タンパク質の発現を促進。

ステップ2:ミトコンドリアの活性化

細胞膜の輸送タンパク質は、ミトコンドリアが産生するATP(エネルギー)を使って毒素を排出します。ミトコンドリア機能の低下は、毒素排出能力の低下につながります。

ミトコンドリアをサポートする栄養素

  • ビタミンB群、コエンザイムQ10、鉄、マグネシウム: エネルギー産生に不可欠。
  • PQQ: 新しいミトコンドリアの生成促進、強力な抗酸化作用。
  • リン脂質、オメガ3脂肪酸: ミトコンドリア膜の修復。
  • 抗酸化物質(NAC、グルタチオン、セレン、マンガン、亜鉛、銅、R-αリポ酸、PQQなど): ミトコンドリアを酸化ストレスから保護。

ステップ3:脂肪に蓄積された毒素の安全な動員

脂溶性毒素は脂肪組織、細胞膜、ミトコンドリア膜に蓄積されやすい性質があります。これらは急性毒性を回避する生体防御反応でもありますが、長期的には慢性炎症などを引き起こす可能性があります。脂肪動員(運動やカロリー制限)により毒素を血中に放出する機会となりますが、排出経路が機能していないと再吸収・再分配のリスクがあるため、便・尿・汗の排出ルート確保と、細胞膜・ミトコンドリア膜の修復・再構築を優先することが基本です。

脳のデトックス:グリンパティックシステムと血液脳関門


脳は脂質に富み、脂溶性毒素が蓄積しやすく、排出が困難な臓器です。脳に毒素が蓄積すると、認知機能低下、メンタルヘルスの悪化など、多面的な不調が現れやすいです。

グリンパティックシステム:脳の洗浄システム

脳脊髄液の流れを利用して、アミロイドβなどの老廃物や外因性の毒素を脳から排出し、全身の排出経路へ送るシステムです。

グリンパティックシステムを支える要素

  • メラトニン: 深いノンレム睡眠を促し、洗浄機能を高めます。体内時計のリセット(朝の光、夜の光制限)、規則正しい生活リズム(特に22〜23時就寝)が重要です。サプリメントで摂取する場合は、体内時計調整目的なら少量(0.5〜1mg)を目標就寝時刻の4〜5時間前に、睡眠促進目的なら1〜3mgを就寝30〜60分前に摂取します。
  • マグネシウム(特にマグテイン): 深いノンレム睡眠を促し、副交感神経を優位にして排出モードを整えます。脳脊髄液やリンパの流れを支える環境づくりにも役立ちます。
  • DHA: 血液脳関門の細胞膜の柔軟性を高めます。
  • ビタミンD: 脳の炎症を抑え、血液脳関門の構造維持をサポートします。
  • 抗炎症ポリフェノール(クルクミン、ルテオリン、ケルセチンなど): 脳内の炎症を抑え、血管や細胞膜の環境を整えます。
  • 十分な水分摂取: グリンパティックシステムの洗浄機能に不可欠です。
  • 運動(ウォーキング、ジョギングなど): 脳脊髄液とリンパの循環を促進します。
  • マインドフルネス: 副交感神経を優位にし、グリンパティックシステムの活性化を助けます。

血液脳関門(BBB):脳の防御システム

血液脳関門は、脳に必要な栄養素を選択的に取り込み(輸送機能)、脳内の不要な代謝産物や侵入した毒素を積極的に排出し(解毒機能)、病原体や有害物質の侵入を防ぐ(バリア機能)という3つの重要な機能を担っています。

血液脳関門の修復と強化に必要な栄養素

  • DHA、リン脂質(特にシチコリン): 血液脳関門の主要構成要素であり、修復・再構築に直接関与します。
  • 抗酸化物質(グルタチオン、NAC、セレン、R-リポ酸、ビタミンC、ビタミンEなど): 酸化ストレスから血液脳関門のバリア機能を保護します。
  • 亜鉛(ピコリン酸亜鉛、ビスグリシン酸亜鉛など吸収率の高いキレート型): 輸送タンパク質の生成と機能、炎症・酸化ストレスからの保護をサポートします。
  • ミトコンドリアを活性化させる栄養素(ビタミンB群、コエンザイムQ10、鉄、マグネシウム、PQQなど): ATP産生は輸送タンパク質の機能やバリア構造の維持に不可欠ですが、活性化前に抗酸化対策が重要です。
  • フィトケミカル(レスベラトロール、クルクミン、ケルセチン、アスタキサンチンなど): 抗酸化・抗炎症作用により、バリア構造の維持に貢献します。