発達障害に対するアプローチ


当院ではフィシオエナジェティック®によって症状の原因を調べています。フィシオエナジェティック®では、腕の長さの変化となって現れる体の反応を読み取りながら治療を進めていきます。これをARテスト(腕長反射)と言います。

※当院では医師のような病気の診断や医療行為はできません。フィシオエナジェティック®はあくまで代替療法であり、現代医学で認められていない事をご了承下さい。

 

検査(ARテスト)は小さなお子様でも大丈夫です(大人の発達障害も歓迎)

じっとしていられない小さなお子様の場合、お母さんの体を代わりに使う代理テストという方法で検査可能です。その場合、お母さんの体を使って検査する間は、お子様は待合室で待って頂きますが、その間にお子様の面倒をみて下さる付き添いの方が必要です。

また、サプリメントを飲めなかったり嫌がるお子さんの場合、なるべく粉や液体のサプリメントを使い(タブレットは砕いて粉にする)、それをジュースや味の濃い料理に混ぜて飲ませるなどお母さんの努力が絶対必要です。

 

発達障害のセラピーのポイント / このページの要点

発達障害の原因としては、ストレス、養育者が落ち着いていない事、トラウマ(発達性トラウマ)、メチル化異常(主に低メチル化)、モノアミンの合成不足、BDNFの不足、グルタミン酸の興奮毒性、眼球運動・固有・前庭覚の問題など。

栄養療法

メチル化が不十分な状態(低メチル化)ではシナプス間隙の神経伝達物質が減少する。逆にメチル化が過剰な状態(高メチル化)だと神経伝達物質が過剰になる。発達障害の人は低メチル化の人が多い。メチル化でよく使うサプリメントはメチオニン、SAMe、亜鉛、メチルコバラミン、メチル葉酸、P5Pなど。セロトニンとドーパミンを合成するために、トリプトファン、チロシン、葉酸、P5Pなどが必要。過剰なグルタミン酸の働きを抑えるにはP5P、NAC、マグネシウム、亜鉛などが必要。

メチル化によって、(1)神経伝達物質の量が決まり、(2)神経細胞の軸索が伸びる事によって脳内ネットワークを形成し、(3)ミエリンを形成する事で軸索の保護や神経細胞の代謝を促している。よってメチル化へのアプローチはストレスに強い脳を作るために非常に重要である。しかしメチル化にいきなりアプローチしても成功しない。

栄養療法においては基本的な事からスタートする。具体的には、水分と電解質の補給(細胞の健全な働きに必須です)、酸化ストレス対策、解毒、細胞膜の修復、ミトコンドリアの活性化、リーキーガット、腸内細菌など腸内環境の改善、消化を良くする(胃酸・消化酵素・胆汁などの分泌)、グルタミン酸の興奮毒性など。そして、上記のような栄養療法の基本・土台を作り上げてからメチル化やモノアミンの代謝にアプローチしてゆく。メチル化によって神経伝達物質の量の調節、神経細胞の発達、神経ネットワークの形成が促される。特に胎児~幼少期にかけての栄養はその後の人生に大きく影響する。

運動
脳を発達させる重要な因子であるBDNF(脳由来神経栄養因子)を増やすために運動が必要。

子供の心理療法
子供は自分で自分を落ち着かせる事ができない。そのため親に落ち着かせてもらうという体験を繰り返す事で子供は自分で自分を落ち着かせる事ができるようになるが、その親が落ち着いていない事がとても多い。その場合は親がセラピーを受ける事が必要になる。

大人の心理療法
発達障害のようにみえて実は発達トラウマである可能性もある。その場合、まず取り組むべき事は、ストレスのない状態ではしっかり落ち着いている状態を目指すセラピー。それができてから発達トラウマに対するセラピーを開始する。発達トラウマは1年~3年ほどかけてゆっくりとしか変化しない。スロー・イズ・ファスト(ゆっくりやるのが近道)だという事をしっかり理解する。

休養 / ストレス低減
大きなストレスがかかっている大人の場合、真っ先に取り組むべき事は、ストレスを減らし、休養する時間と安心・安全を確保する事。例えば、仕事が忙しすぎる、介護疲れ、育児疲れ、パワハラなど、あまりにも大きすぎるストレスが降り掛かっている場合は、休職する、退職する、職場の移動をお願いする、他の人に介護や育児を頼むなどする。

眼球運動・固有感覚・前庭感覚の統合
発達障害の人は特にこれらの感覚の統合不全がある。統合のために、栄養、運動、施術、心理療法などがある。

 

メチル化

メチル化とエピジェネティクス

エピジェネティクスとは遺伝子の働きを調節する仕組みです。

両親から受け継いだDNA(遺伝子)の配列を変える事はできませんが、遺伝子の働きを調節するエピジェネティックスという仕組みは栄養状態等により変化し、それによって体質が良くも悪くも変わります。

しかし、胎児期や幼少期の栄養状態等により生じたエピジェネティックスの変化は成長してからも変化しにくいのです。つまり胎児期や幼少期の栄養状態がその後の体質に一生大きな影響を及ぼすことが明らかになっています。(成長してから生じたエピジェネティクスの変化は再び変化しやすいという事もわかっています)ですから発達障害はできるだけ早い時期、それも胎児期や幼少期の頃からアプローチする事が重要になります。

胎児期の栄養状態が成長してからの体質に大きな影響を及ぼすという事を裏付ける有名な研究があります。

第二次世界大戦の末期の1944年から終戦までの7ヶ月間、オランダはナチスドイツによる出入港禁止措置のため、深刻な食糧不足に見舞われて多くの人が飢餓状態になりました。その時に生まれた4万人の新生児のその後を調べてみると、低体重で生まれたにもかかわらず成人後は高い確率で肥満になり、糖尿病、高血圧、心血管疾患、統合失調症などの羅漢率が通常よりも高かったのです。

そして、エピジェネティクスの働きの中心となるのが「メチル化(メチレーション)」です。そのためメチル化の状態を良くするような栄養アプローチがもっとも重要になります。

海外では、自閉症や発達障害の治療をされている一部の先生達は、メチレーション検査を重視し、そこから導き出したサプリメントや食事で治療されています。その他、メチレーションの異常は自閉症や発達障害だけでなく、うつや統合失調症などにも関係していると言われています。

↑メチル化の事が書いてある書籍。一般の人には難解すぎて理解できないと思います。

メチル化と神経伝達物質の量

メチル化はセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の量に大きく影響します。メチル化が不十分な状態である「低メチル化」と過剰な状態である「高メチル化」では、神経伝達物質の量が違うのです。

※画像はウィキペディアより)

低メチル化タイプの人は、シナプス間隙(神経と神経の間の部分)に放出されたセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の再吸収が促進されます。そのためシナプス間隙の神経伝達物質が不足します。 このタイプの人は発達障害やうつの人に多いようです。

逆に高メチル化タイプの人は、神経伝達物質の再吸収が低下するため、シナプス間隙の神経伝達物質が過剰になります。このタイプの人は統合失調症や双極性障害の人に多いようです。

またセロトニンやドーパミンを合成するにはBH4という補酵素が必要です。そのBH4は前駆体であるBH2から合成されます。BH2からBH4への変換はメチル化が十分にできている時に促進されるので、低メチル化だとセロトニンやドーパミンの合成が低下します。

メチル化と神経細胞の発達および脳内ネットワークの形成

※画像はウィキペディアより

PRMT1というメチル化酵素は、神経細胞の軸索という部分を伸ばしてゆき、脳内の情報ネットワークを作ってゆきます。

※末梢神経障害の薬として医師が処方するメチコバールという薬は、ビタミンB12にメチル基がついているメチルコバラミン(ビタミン剤)ですが、これはメチル化にかなり関係の深い栄養素です。メチコバールはメチル化を促す事によって末梢神経の修復をしようとしているものと考えられます。

メチル化とミエリンの形成

さらに、軸索を伸ばしてゆくPRMT1はミエリン鞘の形成にも深く関与しています。

ミエリン(髄鞘)とは、神経を覆っている絶縁体のカバーのようなものです。このミエリンが有る神経を有髄神経と言い、ミエリンが無い神経を無髄神経と言います。そして、このミエリンの形成不全や障害が、発達障害や自閉症と大きな関係があります。

それから、PEMTというメチル化酵素は、ミエリンの材料であるホスファチジルコリンを合成します。そのホスファチジルコリンは、卵や肉などの食品からコリンを十分に摂取できていればPEMTの働きがなくても足りているのですが、多くの人が食事から十分にコリンを摂取できていないので、やはりPEMTの働きは重要です。

またホスファチジルコリンは細胞膜の材料でもあるので、健全な細胞作りには欠かせない重要な栄養素です。妊婦や成長期の子供など新しい細胞をどんどん作っている時期には、細胞の増加に比例して細胞膜の材料もたくさん必要になります。ですからホスファチジルコリンの不足の影響を最も受けやすいのが妊婦と成長期の子供です。

 

自律神経系では、腹側迷走神経(副交感神経のサブカテゴリの1つ)にミエリンが有ります。腹側迷走神経は、人との繋がりや落ち着きをもたらすのに非常に重要な神経です。それに対して背側迷走神経(副交感神経のサブカテゴリの1つ)や交感神経はミエリンが有りません。

なのでミエリンの形成不全があると腹側迷走神経を使って人と繋がったり、落ち着いたりする事が苦手になります。ですからミエリン形成を促す事は発達障害の人にはとても重要なのです。

グルタミン酸の興奮毒性

グルタミン酸というのは中枢神経における興奮性の神経伝達物質で、これが正常に(適度に)働いていれば記憶や学習などの脳の高次機能システムに重要な役割を果たします。しかし過剰なグルタミン酸は脳の興奮性を亢進させ、その興奮毒性により中枢神経を傷害してゆきます。

また発達障害の人に感覚過敏が多い事がよく知られていますが、グルタミン酸の興奮毒性は中枢性感作という中枢神経に原因がある感覚過敏を引き起こします。

グルタミン酸の興奮毒性の原因

(1)まず考えられるのがストレスです。グルタミン酸神経の働きはストレスによって増強するからです。ストレス対策は非常に重要になります。

(2)それからGAD(グルタミン酸デカルボキシラーゼ)という酵素の活性低下が考えられます。グルタミン酸はGADによってGABA(ガンマアミノ酪酸)という抑制性の神経伝達物質、つまり脳の興奮を抑え精神を安定させる物質に変わります。睡眠薬はこのGABAの働きを良くして脳の興奮を抑える働きがあります。

そのGADの酵素活性が低下すると、グルタミン酸とGABAがアンバランスになり、グルタミン酸の興奮毒性が増大します。そのGADの酵素活性を低下させる要因には以下のようなものがあります。

  • 遺伝
  • 重金属(特に水銀と鉛)
  • ウイルス
  • 抗GAD抗体(インスリン依存性糖尿病の患者に多い)

(3)グルタミン酸受容体(特に重要なのがNMDA型グルタミン酸受容体)が過剰に活性化する事も興奮毒性の増大に繋がります。マグネシウムや亜鉛にはグルタミン酸受容体の活性を落ち着かせる働きがあります。

↑炎症やストレスなどによってIDOという酵素が活性化すると、トリプトファンがキヌレニン経路に流れてゆきます。そして最終的にはナイアシンの活性化型であるNADに代謝されるのですが、この時にマグネシウムが不足しているとNMDA型グルタミン酸受容体を活性化する作用があるキノリン酸で代謝がストップしキノリン酸が増加します。

ですから、慢性炎症やストレスのある状況下ではマグネシウムをたくさん摂取する必要があります。

BDNF(脳由来神経栄養因子)

BDNF(脳由来神経栄養因子)とは、脳細胞の増加や成長を促すタンパク質です。このBDNFの減少が脳に関する様々な障害と大きく関係がある事が明らかになっています。

このBDNFはストレス低減と運動によって増加しますので、運動を習慣化し、必要あれば心理療法を行う事がBDNFの増加にとても重要になってくるのです。(特に脳が最も発達する子供の時の運動はとても重要!)

発達性トラウマについて

発達性トラウマとは、トラウマやPTSDについて脳科学的な研究を行っている精神科医のベッセル・ヴァン・デア・コークが提唱した概念です。

子供の頃に親に虐待されたり、愛されなかったりして育ったトラウマ(発達性トラウマ)があると、一見、発達障害のように見える事があります。自分は発達障害だったと思っていたら、実は発達性トラウマだったという人もいるのです。

子供は自分で自分を落ち着かせる事ができません。ですから大人に落ち着かせてもらうという事(共同調整)を繰り返し体験する事で、やがて自分で自分を落ち着かせる事(自己調整)ができるようになります。ですから、親がついつい怒鳴ったり、心配しすぎたり、落ち着き無くマシンガンのように話しているのであれば、子供は共同調整をする体験が不足しているかもしれません。一緒にいるだけで落ち着くという体験を子供に繰り返しさせてあげるためにも、まず親が私のセラピーを受ける必要があるケースも割と多いです。

発達性トラウマがある大人は自己調整ができないので、共同調整からやりなおす必要があります。セラピストによってしっかり落ち着かせてもらったという体験を繰り返し、非常にゆっくりと長い期間をかけて自己調整ができるように目指します。短期間で変わる事はまずありません。

※私の心理療法のやり方についてこちらのページに詳しく解説しています。

眼球運動・固有感覚・前庭感覚の統合について

眼球運動や固有感覚や前庭感覚は密接に繋がっていて、自律神経が落ち着くのにとても貢献しています。そして発達障害など自分を落ち着かせる事が苦手な人の多くに、眼球運動や固有感覚や前庭感覚の異常があります。

発達障害の人はバランスディスクやバランスボール、あるいは様々なエクササイズによって固有感覚や前庭感覚を発達させる事が重要になります。固有感覚にトラウマがある人もいるので、その場合は固有感覚にアプローチする心理療法を行う事もあります。

眼球運動の異常は、重金属のデトックスや歯科金属の除去、頚椎の調整、マグネット療法などが効果的な事がよくあります。また眼球運動にアプローチする心理療法も行います。ただし眼球運動にアプローチする心理療法は刺激がとても強いので慎重にやらなければなりません。基本的に心理療法をやり始めた初期の頃は行いません。