慢性疲労症候群や副腎疲労症候群に対する当院のアプローチ
当院ではフィシオエナジェティック®によって症状の原因を調べています。フィシオエナジェティック®では、腕の長さの変化となって現れる体の反応を読み取りながら治療を進めていきます。これをARテスト(腕長反射)と言います。
※当院では医師のような病気の診断や医療行為はできません。フィシオエナジェティック®はあくまで代替療法であり、現代医学で認められていない事をご了承下さい。
副腎疲労の症状
副腎疲労の代表的な症状は、慢性疲労、朝起きられない、うつ症状などです。そのため、自律神経系失調症、慢性疲労症候群、起立性調節障害、うつ病などの病気に副腎疲労が大きく関係しています。
副腎疲労の症状
- うつ症状(特にやる気がでない、何もしたくないなど)
- 胃の痛みやもたれ感(機能性ディスペプシア)
- 脳疲労/頭が働かない/ブレインフォグ
- 立ちくらみ/長時間立っていられない
- 甘い物をやたら欲しがる
- カフェインがないと仕事ができない
- 免疫疾患/アレルギー/アトピー
- 朝起きられない/午前中は調子が悪い/午後からやっと調子が出てくる
- 不妊症/性欲減退
副腎皮質が分泌するコルチゾールには、高ストレス作用、抗炎症作用、免疫抑制、血糖上昇作用などがあります。ですから副腎疲労の原因は、ストレス、炎症、免疫異常、低血糖などが長期間続く事です。
HPA軸機能障害
HPA軸とは、この図のように、視床下部、下垂体、副腎皮質の密接なつながりをそれぞれの英語の頭文字をとってHPA軸といいます。
ストレスに曝された時には、このHPA軸が活性化して副腎皮質からコルチゾールの分泌が増大します。その結果、心身は覚醒し、ストレスに対抗できるようになります。そして、ストレスが無くなると、コルチゾールの分泌量は正常値に戻ってゆきます。
また、海馬とHPA軸の視床下部と下垂体にはコルチゾールの受容体があって、そこでコルチゾールの濃度がどれくらいなのかというフィードバックを受けています。そして、コルチゾールの濃度が過剰な時は、フィードバックを受けた海馬、視床下部、下垂体がコルチゾールの産生量を減らすように調節しています。このようにして過剰なコルチゾールの分泌を抑制する仕組みをネガティブフィードバックといいます。
しかし、ストレスが慢性化するとHPA軸はしだいにおかしくなります。HPA軸が亢進しっぱなしになっってコルゾールの過剰分泌が続く人もいれば、逆にHPA軸が抑制されっぱなしになってコルチゾールの分泌不足が続く人もいます。そして、そのようにHPA軸がおかしくなった状態をHPA軸機能障害といいます。
HPA軸が亢進しっぱなしになっている人が多い疾患として、定形のうつ病の人や、神経性やせ症,強迫性障害,パニック障害などがあります。また、逆境的小児期体験といって幼少期に虐待などの強いストレスを受け続けた人にも多いようです。このタイプの人は、海馬の萎縮やコルチゾールの受容体の発現低下などが起こっていて、ネガティブフィードバック機構が破綻しているのです。そのため脳内に過剰なコルチゾールが流入しっぱなしになり、さらに海馬の損傷や萎縮が進行するという負のループが成立しています。
それから、HPA軸が抑制されっぱなしになっている人が多い疾患として、、非定型うつ病,慢性疲労症候群,線維筋痛症,成人の心的外傷後ストレス障害(PTSD)などがあります。また、慢性炎症、免疫の暴走、低血糖などの問題を引き起こしたり、悪化させたりします。恐らくこれが一般的に知られている副腎疲労の病態なのではないかと思います。このように、副腎疲労と言われている病態は、副腎が疲労してホルモンの産生ができない状態になっているのではなく、副腎をコントロールする脳のほうに問題がある事がとても多いようです。その場合は、副腎疲労というよりもHPA軸機能障害のほうがより適切な言葉かもしれません。
ただし、薬のステロイドを長期間使用すると副腎が萎縮してしまい副腎皮質機能が低下します。そして自力でコルチゾールを作れなくなります。そのような状態でいきなり脱ステをやるのはとても危険なのですが、どうしても脱ステをやりたい場合は、必ず医者に相談するべきでしょう。
それから、慢性のストレスによって概日リズムの乱れがよくおきます。通常、コルチゾールの分泌量は朝7時くらいにピークに達し、夜にむけて次第に減少するというリズムが正常なのですが、慢性のストレスによって、昼過ぎから夜にかけてピークに達し、朝に減少するというパターンになる事があります。朝起きられない起立性調節障害の人はまさにこのような状態に陥っています。
アロスタティック負荷
慢性のストレスによって心身が疲弊する事を専門用語ではアロスタティック負荷と言います。このアロスタティック負荷に一度陥ってしまうと、慢性のストレスから開放された後も、HPA軸はなかなか正常には戻りません。
また、脳がストレスと感じる閾値が下がります。そのため、些細な事やストレスとは思えないような事でも、その人にとってはストレスになってしまう事があります。そうなると、例え本人がストレスを自覚していなくても、慢性的にストレスがかかっている状態になります。
そのような状態に陥っている人は、トラウマセラピーによって脳がストレスと感じる閾値を上げる必要があります。私の場合は、身体感覚にアプローチするトラウマセラピーを行っています。最初は、ストレスのない状態ではしっかり落ち着けるようにする事を目指し、それができたらストレスを想定したトラウマセラピーに移行してゆきます。
また、過剰なストレスがかかっている場合は、まず一番最初にストレスを減らすという事から取り掛かる必要があります。これはトラウマセラピーよりも優先度が高いです。例えば仕事を減らす、楽な仕事に変える、学校や会社をしばらく休む、睡眠時間をしっかり確保する、親の介護や子供の世話を他の人に頼むなどしてストレスを減らしてください。このような事は絶対に必要です。時々、過剰なストレスがかかっているのにもかかわらず、ストレスの低減を一切せずに栄養療法だけで治そうと思っている人がいらっしゃるのですが、残念ながら、それでは改善は非常に難しいでしょう。
炎症と低血糖
低血糖や炎症もストレスに曝された時と同じようにHPA軸を活性化させて炎症を沈めたり、血糖値を上昇させようとする反応がおきます。しかし低血糖や炎症が慢性化するとHPA軸機能障害を引き起こすようになります。
低血糖の原因には、甘いものや糖質の取りすぎによる反応性低血糖や、断食や糖質制限などがあります。糖質制限でも低血糖にならない人がいますが、それは脂質の代謝がかなり良い人だけですのでHPA軸機能障害がある人は基本的は糖質制限はやらないほうがいいでしょう。
それから、慢性炎症の原因として活性酸素、悪化した腸内環境、肥満、病巣感染、ネクローシスなどがあります。
病巣感染とは身体のどこかに慢性的な細菌感染や慢性炎症がおきていて、その病巣が起因になって様々な病気を引き起こしている状態です。病巣の好発箇所は、失活歯と言って神経を抜いた歯や歯周病などの歯科領域、それから副鼻腔や扁桃です。そして、その病巣自体にはほとんど症状がなかったり、あっても軽い症状だったりする事が多いので、長い間放置されてしまう事が多いようです。もし病巣感染があった場合、普通の歯科や耳鼻科ではなく、病巣感染について知識があり経験も豊かな歯科や耳鼻科での治療が必要になってきます。
ネクローシスは、出来損ないの細胞が出来た時に、その細胞が破裂するような死に方です。細胞内の物質を撒き散らすように破裂するので、巻き散らかされた細胞内の物質に対して過剰な免疫反応がおこり炎症を誘発します。ネクローシスを防ぐためには、出来損ないの細胞が増えないようにしたり、出来損ないの細胞が出来た時にアポトーシスという周りの細胞に迷惑をかけないキレイな死に方ができるようにする事です。このあたりの事は、自己免疫疾患について解説したこちらのページをご覧になってください。
https://kawasechiro.sakura.ne.jp/info16.html
グルタミン酸の興奮毒性
グルタミン酸とは興奮性の神経伝達物質で、記憶や学習などに重要な役割を果たしています。ですが、グルタミン酸の働きが過剰だと、グルタミン酸の興奮毒性により、脳の損傷や萎縮を引き起こしてしまいます。脳の中でも特に損傷や萎縮がおこるのは海馬です。そのため、海馬によるネガティブフィードバック機構が破綻してしまいHPA軸が亢進し続ける事になります。
ですから、特にHPA軸が亢進しているタイプには、グルタミン酸の興奮毒性を防ぐアプローチもかなり重要になってきます。例えば、ストレス低減やトラウマセラピー、グルタミン酸をGABAに代謝させるビタミンB6や、NMDA型グルタミン酸受容体の働きを抑制するマグネシウムや亜鉛、それからNAC。それから、ATPが不足すると興奮毒性が高まるので、ATPの合成を促進させるためにビタミンB郡や鉄などが必要かもしれません。グルタミン酸については、こちらの動画でもっと詳しく解説しています
海馬の修復
海馬はHPA軸にネガティブフィードバックの信号をおくる重要な所です。特にHPA軸が亢進しつづけているタイプの人は、過剰なコルチゾールの流入により海馬が萎縮したり損傷していますので、ここを修復しなければなりません。
萎縮した脳を回復させるためには運動が一番です。運動は、脳細胞の成長や再生を促してくれるBDNFという物質の発現を増強してくれます。ストレスに強い脳を作るには運動は必須なんです。また、運動は適度にやれば炎症を抑える効果やリラックス効果もありますので、その点からも強力にお勧めします。ただし、やりすぎるとかえって炎症を増大させたり、疲労感が増大しますので注意が必要です。
また、HPA軸機能障害がある人は筋肉を弛緩させるために必要なATPというエネルギーの産生が低下している人が多いため、やりすぎると筋肉の硬直や痛みが酷くなります。
そのような事が起こらないために重要なことは、無理のない範囲で行う事です。運動のやり過ぎ防ぐためには、自分の体の声に耳を傾ける事が重要です。運動後に疲労感が増大してエネルギーレベルが減ったようにと感じる場合は、やりすぎです。もっと楽に運動しましょう。そして、少しずつ慎重に運動の強度や質を上げていくようにするのです。
しかし、うつ病の人やうつっぽい人は、そもそも運動をしようというやる気がおきないという問題がありますよね。だから、実際にやるのは難しいかもしれませんが、もし可能ならば是非取り組んでみましょう。最初はウォーキングでも十分です。ちなみに私の好きな運動は筋トレとハイキングです。忙しくて運動する時間がないという人は、そもそも運動する時間もないくらい忙しいというのがHPA軸機能障害の原因ですので、そこから改める必要があるでしょう。
また、脳細胞の材料となる栄養素や抗酸化物質も脳の修復に重要です。例えば、ホスファチジルコリン、オメガ3、NAC、ビタミンEなどがあります。私の場合はARテストでその人に必要なものを選んでいます。
アダプトゲン
アダプトゲンとはストレスに対する抵抗力を高める働きが期待できるハーブの事です。アダプトゲンのアダプトには「適応する」という意味があります。代表的なアダプトゲンには、アシュワガンダ、エゾウコギ、ロディオラ、冬虫夏草、ゴツコラ、バコパなどがあります。
このようなアダプトゲンはHPA軸にも作用し、ストレスがかかった時にコルチゾールの過剰分泌や分泌不足を防いでくれます。
アダプトゲンのほかには、ホスファチジルセリンやオメガ3脂肪酸やテアニンもHPA軸の調整作用があります。
副腎疲労のサプリメント
副腎疲労のサプリメントとしてよく知られているのは、ビタミンB郡、とくにパントテン酸、それからビタミンC、マグネシウム、亜鉛などでしょうか。そのような栄養素がHPA軸の亢進によって枯渇する人もいるでしょう。あるいは、そのような栄養素が枯渇しているからコルチゾールを産生できないという事も考えられます。
ただし、そのような副腎疲労のサプリメントを使っても、何の効果もなかった人も結構多いのではないかと思います。なぜなら、副腎疲労のサプリメントだけではHPA軸機能障害に対処できないからです。副腎疲労で悩む人達が栄養療法で全く改善しない場合、理由は、このあたりにあるんじゃないかなと私は思います。
また、コルチゾールの材料であるLDLコレステロールが低い人はコルチゾールを産生できなくなります。LDLコレステロールが低い人は、摂取カロリーが慢性的に足りないのが原因ですので、摂取カロリーを増やす事が解決策なります。
副腎と甲状腺の関係
副腎疲労と甲状腺機能低下の症状はかなり似ていますが、それはコルチゾールの分泌が過剰あるいは不足すると、T3という甲状腺ホルモンが減少するからです。
甲状腺ホルモンには効き目が強いT3と効き目が非常に弱いT4があります。甲状腺は効き目が強いT3をちょっとしか作らないので、肝臓や腎臓などでT4をT3に変換してT3を増加させています。しかし、過剰なコルチゾールはT4からT3への変換を阻害してしまうんです。またコルチゾールが不足している場合は、T4からT3ではなく、甲状腺ホルモンとしての効き目がほとんどないリバースT3へ変換されてしまいます。つまり、コルチゾールが過剰でも不足していても、T3が合成されなくなります。
また、副腎疲労によって炎症や過剰な免疫反応を抑えられなくなってしまう事により、甲状腺が炎症を起こしたり、甲状腺の自己免疫疾患を引き起こす事もあります。
このように、甲状腺と副腎には密接な繋がりがあるので、甲状腺機能低下の人は副腎にもアプローチしなければならない事があります。甲状腺機能低下についてはこちらのページでもっと詳しく解説しています。
https://kawasechiro.sakura.ne.jp/kohjohsen.html