甲状腺機能低下に対するアプローチ
当院ではフィシオエナジェティック®によって症状の原因を調べています。フィシオエナジェティック®では、腕の長さの変化となって現れる体の反応を読み取りながら治療を進めていきます。これをARテスト(腕長反射)と言います。
※当院では医師のような病気の診断や医療行為はできません。フィシオエナジェティック®はあくまで代替療法であり、現代医学で認められていない事をご了承下さい。
甲状腺機能低下? 潜在性甲状腺機能低下? それともLowT3症候群?
甲状腺機能低下とは、甲状腺から甲状腺ホルモンの分泌が低下している状態です。甲状腺機能低下では、甲状腺ホルモン(FT3とFT4)が低値で、それを何とかしようとして甲状腺刺激ホルモン(TSH)が高値になっています。
潜在性甲状腺機能低下とは、下垂体から甲状腺刺激ホルモンを多く分泌する事によって、やっとの事で甲状腺ホルモンの分泌が分泌している状態です。潜在性甲状腺機能低下では、甲状腺ホルモン(FT3とFT4)は正常ですが、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が高値多くなっています。
LowT3症候群とは末梢組織においてT4からT3への変換ができない状態なので、FT4は正常ですがFT3は低値となります。なおLowT3は橋本病などの甲状腺の疾患ではなく、非甲状腺疾患(non-thyroidal illness)です。
一般的な基準値だと、だいたいTSHは4.5μU/ml以上、FT3は2.2pg/dl以下、FT4は0.8ng/dl以下で問題になるようです。しかし理想としては、TSHが1.0μU/ml以下、FT3は3.0~4.0pg/dl、FT4が1.5ng/dlくらいが目安であり、基準値内でも改善の必要がある場合が多いのです。
このページでは病院の検査では正常値内であるため甲状腺機能低下と診断されないレベルの程度の軽い甲状腺機能低下についてお話します。もしも病院で甲状腺機能低下と診断される場合、一番多い原因は自己免疫疾患の一種である橋本病です。その場合は、こちらの自己免疫疾患について解説したページをご覧になってください。
https://kawasechiro.sakura.ne.jp/info16.html
甲状腺ホルモン産生に必要な栄養素
甲状腺ホルモンの原材料となる栄養素はチロシンというアミノ酸とヨウ素というミネラルです。ヨウ素はヨードとも言います。そして甲状腺ペルオキシダーゼという酵素の働きによってT4とT3という2種類の甲状腺ホルモンが産生されます。そして、この甲状腺ペルオキシダーゼを活性化するのに鉄が必要です。
このようにしてT4とT3という2つの甲状腺ホルモンが産生されますが、このうち80%がT4で、20%がT3です。甲状腺はT3よりT4のほうをたくさん産生するのですがT4はT3に比べて作用がとても弱いという特徴があります。
なので、作用が強いT3を増やすために、肝臓や腎臓、脳や筋肉や心臓など各組織において、デヨージナーゼという酵素の働きによってT4がT3に変換されています。このデヨージナーゼを活性化させるのがセレンと亜鉛です。このように、甲状腺ホルモン産生にはチロシン、ヨウ素、鉄、セレン、亜鉛が必要になります。この中で特に欠乏している人が多いのが鉄と亜鉛です。
鉄については、食事やサプリメントで鉄を摂取すればすんなり解決する人もいますが、鉄を摂取しても改善しない人や、逆に体調が悪化するような人は、先に活性酸素対策や悪玉菌の除菌をする事が必要かもしれません。なぜなら、鉄は活性酸素や悪玉菌の問題をさらに増大させるからです。貯蔵鉄を調べる指標としてフェリチンがありますが、これは40-50 ng/mLくらいあれば十分でしょう。またフェリチンは炎症によっても増加します。特に、血清鉄が低下しているのにフェリチンが上昇しているというパターンは炎症が原因かもしれませんので注意してください。
亜鉛については、T4からT3の変換に関わっているだけでなく、甲状腺ホルモンが受容体に結合して甲状腺ホルモンとしての作用を発揮するためにも必要なミネラルです。ですから、亜鉛がなければ、例えT3の薬を使ってT3レベルを上げたとしても、甲状腺ホルモンとしての作用が十分に発揮できなくなるんです。それから、困った事に、甲状腺機能が低下していると、腸管からの亜鉛の吸収率が低下したり、腎臓から亜鉛の排泄が増加するという現象がおき、さらに甲状腺機能が低下すると事がおきます。また、慢性甲状腺炎のように慢性炎症があるときは亜鉛の拮抗ミネラルである銅が増加するため、その銅の拮抗作用により亜鉛が不足します。このような問題をパスするためには、吸収率の高いキレート亜鉛やクエン酸亜鉛を使用すると良いでしょう。
チロシンは、通常の食事をしていれば不足する事はあまりありませんが、それでもチロシンが不足している人もいます。これにはカテコールアミンの代謝スピードが関係しているかもしれません。カテコールアミンとはドーパミンやノルアドレナリンなどの総称です。この図のように、チロシンは甲状腺ホルモンだけでなく、カテコールアミンの材料でもあります。
そして、COMTやMAOという酵素の作用によってにも代謝されるのですが、その酵素の働きが遺伝的にアップレギュレーションしていて、代謝スピードが早い人がいるのです。そして、代謝スピードが早すぎるために、カテコールアミンの材料であるチロシンも枯渇する場合があります。またストレス反応によって副腎髄質からノルアドレナリンとアドレナリンが大量に分泌する事もチロシンの枯渇に繋がります。このような人の場合、高タンパク食にしたりチロシンのサプリメントを摂取したりしてチロシンを補ったり、ストレスを減らしたり、心理療法によってストレス耐性をつける事が役に立ちます。
セレンは、通常の食事をしていればあまり不足する事がないミネラルです。しかし1日1食だけとか低栄養の人はセレンが不足している人もいますので、その場合はセレンのサプリメントを使います。
外国ではヨウ素欠乏はとても多いのですが、日本人の場合、昆布やわかめなどの海藻から十分にヨウ素を過剰摂取気味に摂取しているのでヨウ素不足の心配はまずいりません。どちらかというと過剰摂取が問題なる事があります。それからゴイトロゲンといって、大豆やアブラナ科の野菜に含まれている甲状腺腫を引き起こす物質があり、大豆やアブラナ科の野菜を食べすぎてはいけないと言う人もいますが、ゴイトロゲンが問題になるのはヨウ素欠乏の人だけです。ヨウ素を十分に摂取している人はゴイトロゲンは問題にならないので、大豆やアブラナ科の野菜を気にせず食べてよいでしょう。
LowT3シンドローム(非甲状腺疾患)
LowT3シンドローム、あるいは低T3症候群とは、TSHやT4は正常なのに、T3だけ低い状態の事です。LowT3シンドロームでは、T3の代わりにリバースT3という代謝活性を持たない甲状腺ホルモンが増加しています。そして病院によってはリバースT3を測定してくれるところもあるようです。
T4をT3に変換する酵素であるデヨージナーゼには、D1、D2、D3と3種類あって、そのうちD1とD2はT4をT3に変換し、D3はT4をリバースT3に変換する働きがあります。つまり、LowT3シンドロームでは3種類のデヨージナーゼのうち、3番めのD3が活性化しているのです。LowT3シンドロームは甲状腺の病気が原因ではないので病院ではあまり問題にされませんが、改善するべき問題です。ではどのようにしてLowT3シンドロームをどのようにして改善したらよいのでしょう?
LowT3シンドロームの原因として一番大きいのは低栄養とストレスです。
無理なダイエットや断食をしている人、思春期やせ症のような摂食障害の人、それから食が細くて摂取カロリーが不足し痩せている人などがLowT3シンドロームによくなります。そのような状態の時、身体は「飢餓状態」になっていると察知し、代謝を抑制して無駄にエネルギーを消耗しないように省エネモードに切り替えているのです。いわば飢餓で倒れていまわないようにする防御反応を起こしているのです。ですから、必要なカロリーを摂取するとよくなりますが、食べたくても食欲がなくてちょっとしか食べられない人はそう簡単にはいきません。多くは炎症とストレスが食欲低下の原因となっていますので、そこにしっかりアプローチする必要があります。また糖質制限でもLowT3シンドロームによくなりますが、糖質制限をしていても、脂質やタンパク質からカロリーを十分摂取していたり、脂質の代謝が優れている人はLowT3シンドロームになりにくいようです。
ストレスを感じている時、ストレスに対抗するコルチゾールというホルモンが副腎皮質から分泌されますが、コルチゾールはT4からT3の変換を抑制します。また慢性的にストレスが続くと、次第に副腎が疲労してコルチゾールの分泌が少なくなりますが、コルチゾールが少なすぎてしまうと、今度はT4からリバースT4への変換が促進されてしまいます。つまり、コルチゾールが多くても少なくてもLowT3シンドロームになるという事です。ですから、ストレスを減らしたり、心理療法によってストレス耐性を上げたりする事が大切です。それに加えて、アシュワガンダ、ビタミンC、亜鉛、マグネシウム、ビタミンB郡など副腎を強化するサプリメントが必要な人もいるでしょう。副腎疲労についてはこちらのページで詳しく解説していますのでご覧になってください。
https://kawasechiro.sakura.ne.jp/hirou.html
甲状腺ホルモンに対する標的組織の反応性低下
甲状腺ホルモンが体内で適切に機能するには、次のことが必要です。
①甲状腺において、甲状腺ペルオキシダーゼによってT4とT3が産生される
②肝臓や腎臓、脳や筋肉や心臓など各組織において、デヨージナーゼ(のD1とD2)によってT4がT3に変換される
③甲状腺ホルモンの標的組織において、甲状腺ホルモンが細胞内で実際に機能する
1番目と2番めについてはすでに説明しましたので、3番めについて説明しましょう。
T3が十分にあったとしても、それが細胞内で機能していない可能性があります。このような標的組織の反応性低下は、ビタミンAやビタミンDが不足している時に起こります。なぜなら、ビタミンAとビタミンDは甲状腺ホルモンは相互作用し遺伝子転写に影響するからです。またビタミンAとDの不足は自己免疫疾患にも大きく関係していますので、これらの不足を調べて補う事はとても重要です。
内分泌かく乱物質
内分泌かく乱物質とは、我々の内分泌系を撹乱させる環境中に存在している化学物質の事です。「環境ホルモン」という言い方もされています。代表的な内分泌かく乱物質には、ダイオキシン、PCB、臭素系難燃剤(BFR)、ビスフェノールA、フタル酸エステルなどがあります。これらの内分泌かく乱物質が甲状腺ホルモンを抑制するような働きをします。これらは甲状腺ホルモンと構造がよく似ていることから甲状腺ホルモンの受容体に結合しするため、比較的低用量でも甲状腺ホルモンの働きを抑制するようです。
ダイオキシンは主にゴミや産業廃棄物の焼却施設から大気中に放出されています。大気中に放出されたダイオキシンは土壌や水質を汚染し、そこで育った植物や動物を食べる事によって体内に非常にわずかながら取り込まれています。昔は、紙パルプ製造などの塩素漂白工程や農薬の製造過程でもダイオキシンが出ていましたが、現在はそれらからのダイオキシンの発生は抑えられているようです。
PCBは、熱に強く電気絶縁性が高い油状の液体で、50年ほど前まで、変圧器やコンデンサーなどの機械に使われていましたが、安全に廃棄物処分されなかったために環境が汚染されました。ダイオキシンやPCBは自然環境中ではほとんど分解されないため、水環境や土壌に長くのこります。ですから、PCBのように50年前に使用・製造が禁止されていても、決して昔の話ではなく、今も食べ物を通じて体内に取り込まれてしまうのです。
臭素系難燃剤は、家電製品、自動車、建材等の構成材料であるプラスチック、ゴム、木材、繊維等を燃えにくくする物質です。そして、焼却や埋立てなどにより環境中に広がり、食物を通じて人体に取り込まれます。
現実問題として、これらの有害化学物質を食品から取り込まないようにする事は難しいので、それらが体内に入ってきてもしっかり解毒できるようにしておくという事が重要になります。
これらの有害化学物質は、まず肝臓のCYP450やグルクロン酸抱合、硫酸抱合などによって解毒された後に、胆汁とくっつき、便とともに排泄される流れになっています。ですから、肝臓の解毒システムを良くしておく事や、胆汁の流れを促進する事、食物繊維やオリゴ糖をしっかり摂取して胆汁とくっついた毒素を便とともに排泄させる事が普段からできていなければなりません。
しかし、甲状腺ホルモンには、胆汁の成分である胆汁酸をコレステロールから合成するのを促進する働きがあるので、甲状腺が機能低下していると胆汁の分泌が低下します。つまり、甲状腺が機能低下しているから胆汁の分泌が悪くなり、胆汁の分泌が悪いから内分泌かく乱物質の解毒機能が低下して甲状腺が機能低下するという悪循環になっています。また、便秘は甲状腺機能低下の代表的な症状ですが、甲状腺機能低下によって便秘になると内分泌かく乱物質の便からの排泄が悪くなり、その結果、甲状腺機能がさらに低下するという悪循環にも陥っています。この悪循環を断ち切るためにも、バイルアシッドやマグネシウム、オリゴ糖などを摂取する事は有効です。
その他に、プラスチック製品を加工しやすくするビスフェノールAやフタル酸エステルも内分泌かく乱物質です。ビスフェノールAはプラスチックを硬くし、フタル酸エステルは軟らかくするために使用されています。ダイオキシンやPCBは半減期が7年と非常に長いので体内に蓄積しやすいのですが、ビスフェノールやフタル酸エステルは半減期が6時間と非常に短く、体内に蓄積しにくいという特徴があります。しかし、なるべく取り入れないようにしたほうがよいでしょう。例えば、弁当やお惣菜などのプラスチック容器ごと電子レンジ調理しないとか、カップラーメンやトマトの缶詰を食べないなどの対策をとるだけで良いかと思います。
運動
みなさんは、甲状腺の病気がある人は運動してはいけない、すると悪化すると言われる事があるかもしれません。しかし、定期的な運動は甲状腺ホルモンレベルを自然に増加させるという事が研究で示されています。また、運動には抗炎症作用もあるので、慢性甲状腺炎のような人にも良いようです。ですから、私は運動不足の人には運動をするようにアドバイスしています。私は運動不足による甲状腺機能低下はかなり多いんじゃなかなと思っています。
ただし、激しい運動は、帰って甲状腺レベルを低下させたり、炎症を増大させてしまい逆効果となります。また、筋肉の硬直や筋肉痛というのは甲状腺機能低下のよく知られている症状でもあります。これは甲状腺機能低下になると筋肉を弛緩させるために必要なATPというエネルギーの産生が低下するからです。ですから、これくらい大丈夫だろうと思って運動しても、筋肉の硬直や痛みが酷くなる事があります。
そのような事が起こらないために重要なことは、無理のない範囲で行う事です。運動のやり過ぎ防ぐためには、自分の体の声に耳を傾ける事が重要です。運動後に疲労感が増大してエネルギーレベルが減ったようにと感じる場合は、やりすぎです。もっと楽に運動しましょう。そして、少しずつ慎重に運動の強度や質を上げていくようにするのです。また必要なカロリーを摂取しないで運動をしてしまうと、さらにエネルギー不足に陥り甲状腺機能が低下しますので、ちゃんと食べてから運動する事も大切です。