自己免疫疾患へのアプローチ


当院ではフィシオエナジェティック®によって症状の原因を調べています。フィシオエナジェティック®では、腕の長さの変化となって現れる体の反応を読み取りながら治療を進めていきます。これをARテスト(腕長反射)と言います。

※当院では医師のような病気の診断や医療行為はできません。フィシオエナジェティック®はあくまで代替療法であり、現代医学で認められていない事をご了承下さい。


アポトーシスとネクローシス

自己免疫疾患には「プログラムされた細胞死」というものが深く関係しています。私達の身体の中には、どうしても出来損ないの細胞ができてしまうんですけども、その出来損ないの細胞は自分から死んでいくようにプログラムされています。その事を「プログラムされた細胞死」と言います。さらに、その「プログラムされた細胞死」には健全な細胞死と、不健全な細胞死があります。健全な細胞死がアポトーシスで、不健全な細胞死がネクローシスです。

アポトーシスは細胞を破裂させずに、きれいに断片化させていく死に方です。細胞の断片は最終的にマクロファージに食べられていきます。この死に方だと周りの細胞にも迷惑をかけず良い死に方なんですが、この死に方をするにはATPというエネルギーが必要です。ですから、もしATPが無いとアポトーシスではなく、ネクローシスとしう死に方をします。

ネクローシスは細胞を破裂させ、細胞内の物質を周辺に撒き散らして、周りの細胞に多大な迷惑をかけながら死にます。そして周辺に撒き散らされた細胞内の物質に対して過剰な免疫反応を誘発するのです。

また、免疫細胞にも、自分の細胞やタンパク質に対して反応する出来損ないがどうしてもできてしまうんですけども、アポトーシスによって死にようにプログラムされています。このようにして出来損ないの免疫細胞を排除するプロセスをネガティブセレクション(負の選択)といいます。

ですから、自己免疫疾患の人は健全な細胞死であるアポトーシスがしっかりできるようにする事がとても重要です。そのためには、ATPを産生するミトコンドリアを健全にするアプローチが必要になります。例えば、ビタミンEで細胞膜を保護する、カリウムやマグネシウムなどの電解質を補給する、グルタチオンを増加させて毒素や活性酸素の対策をする、など、今述べたのは一例ですが、その人に合わせて一人ひとり違うミトコンドリア対策をしていく必要があります。

また、ミトコンドリアが健全になるまでは、細胞分裂を促進させる葉酸とビタミンB12のサプリメントはやめといたほうがよいでしょう。なぜなら、自己免疫疾患の人のように出来損ないの細胞をアポトーシスさせる事ができない人の場合、細胞分裂を促進させてしまうと、出来損ないの細胞がさらに増加して悪化します。ですから、リウマチに使われる薬には葉酸の代謝を阻害して細胞分裂を阻害する作用があるんです。そのようにして出来損ないの細胞が増加しないようにしているのです。

葉酸やビタミンB12を摂取して細胞分裂を促進させる前に、まず栄養療法の基本的な事をしっかってミトコンドリアを健全にしましょう。そしてミトコンドリアが健全になってきた頃に必要があれば、メチルコバラミンやメチル葉酸を摂取するという順序が良いでしょう。

エピジェネティクス

自己免疫疾患の発症には遺伝もある程度関係しています。しかし、自己免疫疾患を発症させる遺伝子をもっていても発症しない人もたくさんいます。なぜなら、DNAの塩基配列は先天的に決まっているので変える事はできませんが、遺伝子の発現の仕方は栄養やストレスなど後天的な要素によって変化するからです。そのような事を研究する学問がエピジェネティクスです。

そして、そのエピジェネティクスを左右するのがメチル化です。ですから、遺伝の要素が大きい病気ほどメチル化へのアプローチがとても重要です。メチル化の状態はストレスにも大きく影響されますのでストレス対策は重要です。メチル化についてはこちらのページで詳しく解説していますのでご覧になってください。

https://kawasechiro.sakura.ne.jp/methylation.html

制御性T細胞

免疫の司令塔であるT細胞には、主にth1細胞、th2細胞、th17細胞、制御性T細胞があります。制御性T細胞はTregともいいます。この中の、制御性T細胞は免疫を抑制する細胞で、自己免疫疾患のような過剰な免疫の暴走を防いでいます。そして、制御性T細胞の働きが弱いためにth17細胞の働きが暴走すると自己免疫疾患になります。

ですから、制御性T細胞の働きを増強させるアプローチが自己免疫疾患の人にはとても重要になります。さきほど説明したネガティブセレクションによって排除される出来損ないの免疫細胞は60%から70%ですので、排除されなかった残りは制御性T細胞などによって抑制される必要があるのです。

この制御性T細胞を増やすには短鎖脂肪酸の一種である酪酸が必要です。そして、その酪酸は腸の善玉菌が作り出しています。ですから、腸内環境を整えて、酪酸を作り出す善玉菌を増やすようなアプローチが重要になります。

その他、ビタミンAとビタミンD3は制御性T細胞を増強させるだけでなく、粘膜を強化して感染症を防ぐなど免疫にとって非常に重要なビタミンです。特にビタミンD3は不足している人が多いので、サプリメントから摂取する事も検討したほうがよいでしょう。

ビタミンA

ビタミンAは優秀な免疫細胞を作るために重要な「リンパ球ホーミング」にも無くてはならない存在です。そのリンパ球ホーミングについて少し説明しましょう。

まずリンパ球とは白血球の一種です。そののリンパ球は、最初に骨髄や胸腺で誕生し、その後腸管などに移住します。その移住先では「ここがまた戻ってくる場所だよ!」という帰巣性(ホーミング)が刷り込まれるのですが、その時に、ビタミンAが代謝されたレチノイン酸が使われるのです。帰巣性が刷り込まれたリンパ球は免疫の勉強をするために全身を循環するのですが、その帰巣性によりまた最初の場所に戻ってきます。これがリンパ球ホーミングです。

このようにビタミンAは免疫にとても重要なビタミンです。日本人の場合、ビタミンAの60%は緑黄色野菜に含まれているβカロチンから、残りの40%は動物性食品に含まれているパルミチン酸レチノールから摂取しています。そして、それらが代謝されて最終的にレチノイン酸になる事でリンパ球ホーミングを誘導したり、制御性T細胞への分化を誘導する事ができます。

しかし、βカロチンやパルミチン酸レチノールをレチノイン酸に代謝する事が苦手な体質の人がいます。その原因の1つがBCMO1という酵素の遺伝子変異です。BCMO1はβカロチンをレチナールに代謝する酵素ですが、この遺伝子に変異がある人が日系人で5~25%、ヨーロッパ系の人で35 ~ 50%もいます。そのような人は動物性食品をあまり食べない食生活をすると体内で合成されるレチノイン酸が不足します。対策としては、動物性食品からパルミチン酸レチノールという形でビタミンAを摂取する事です。また、BCMO1は遺伝子変異がなくても、甲状腺ホルモン、それもT4ではなくT3という甲状腺ホルモンが不足すると活性が低下します。T3は様々な事が原因となって減少しますが、よくあるのが過激なダイエットや運動不足です。だから、ちゃんと食べて運動するという事が重要なのです。

この図のように、パルミチン酸レチノールはレチノール、次にレチナールと変換されるのですが、その時に亜鉛が必要です。ですから、亜鉛不足により体内で合成されるレチノイン酸が不足します。

レチナールをレチノイン酸に代謝するところでRALDH2という酵素の働きが必要なんですが、その酵素の働きが、加齢などによるエピジェネティックな変化により低下するため、体内で合成されるレチノイン酸が不足するという研究もあります。

ビタミンAを体内で輸送しているのが、レチノール結合タンパクとカイロミクロンです。この2つが足りないとビタミンAが効きません。レチノール結合タンパクの合成には亜鉛が必要です。ここでもまた亜鉛が出てきます。それから、カイロミクロンというはそのほとんどが中性脂肪なんで、中性脂肪が不足しているとビタミンAを運ぶ事ができなくなります。中性脂肪の検査値は30~149が正常とされていますが、30とか40くらいは正常値内であっても栄養療法的には低いです。最低80くらいになるようにしっかり食べる必要があります。

それから、ビタミンAやビタミンDなどの脂溶性ビタミンが吸収されるには胆汁の分泌が必要です。そして胆汁の分泌が悪いためにビタミンAが吸収されない人もいます。胆汁の分泌が悪い人の兆候として、脂肪分の多い食事で消化不良を起こしたり、コレステロール値が高かったり、胃酸逆流などの症状があったりします。胆汁の分泌を促進するためにホスファチジルコリンや胆汁酸のサプリメントなどが必要な人もいます。

病巣感染

病巣感染とは、身体のどこかに慢性的な細菌感染や慢性炎症がおきていて、その病巣が起因になって様々な病気を引き起こしている状態です。病巣の好発箇所は、失活歯と言って神経を抜いた歯や歯周病などの歯科領域、それから副鼻腔や扁桃です。そして、その病巣自体にはほとんど症状がなかったり、あっても軽い症状だったりする事が多いので、長い間放置されてしまい病気が発症するケースが多いようです。

もし病巣感染があった場合、普通の歯科や耳鼻科ではなく、病巣感染について知識があり経験も豊かな歯科や耳鼻科での治療が必要になってきます。

リーキーガット

リーキーガットとは、腸粘膜の障害により、正常なら腸から吸収されない未消化の食物や毒素・有害物質などが吸収され血中に入ることで、全身に異物侵入の警告サインを出すことにより免疫細胞が過剰に活性化させます。その結果、自己免疫疾患やアレルギーなど様々な症状を引き起こします。リーキーガットについては、こちらのページで詳しく解説していますのでご覧になってください。

https://kawasechiro.sakura.ne.jp/topic07.html

トラウマ

ストレスは自己免疫疾患に大きく影響しています。ストレスがメチル化異常を引き起こす事によって自己免疫疾患を発症させる遺伝子のスイッチがオンになる事も関係あるでしょうし、ストレスによる過剰な活性酸素が細胞を障害する事も関係あるでしょう。

しかし、自己免疫疾患の人に「何かストレスはありませんか?」とお聞きしても、「思い当たるストレスはありません」と返事が帰ってくる事があります。そして思い当たるストレスがないからストレスは関係ないとか心理療法は必要ないと考えている人もいらっしゃるんですけど、それは違うんです。

実は、そのような人達には、ストレスらしいストレスが何も無くても、しっかり落ち着く事ができないという特徴があります。それは、ストレスとは言えないような日常の小さな刺激、例えば近くに人がいるとか、そんな小さな事にも自律神経が反応しているからなんです。そして、例え安心・安全な状況であっても自律神経はリラックスモードにならず、防衛反応を発動しています。

ですから、心理療法においては、身体感覚を使って、まずは自分がしっかり落ち着いていないという事に気づいてもらう事からスタートします。そして何もストレスが無い状況ではしっかり落ち着く事ができるようになってから、小さなストレスがかかっている状況を想定した心理療法を開始します。ストレスなんか何も無いという人でも、ストレスとは言えないような小さな事が自分にとってストレスになっていたんだなと気づかれる事が多いです。